今月は東京に遠征に行く機会にも恵まれ、その時、大吉原展に行くこともできた。
絵画はもちろん、民芸品は復元模型、CG、年表、などなど。
もの凄いボリュームの展示で、日本美術や歴史が好きな方なら、十分に楽しめると思う。
とくに印象深かったのが、吉原の様子を蒔絵で表したお重。
https://www.suntory.co.jp/sma/collection/data/detail?id=142
見事な細工で、ぜひ実物を見ていただきたい。
さて、ちょっとだけ視点を変えてみる。
江戸時代は色々な文化が発達した時代でもあるけど、吉原はその中でも飛び抜けて豪華で絢爛に見える。
なぜ、こんなにも独自の文化が育ったのか?
色々理由はあるけど、そのひとつが「貨幣経済の発達過程」にある。
当時は、お金持ちの商売人がたくさん生まれるくらいには、経済が発展していた。
でも「お金持ち専用の商売・物品」が潤沢に提供されるほどではなかった。
だから、当時のお金持ちというのは「初鰹を買い占めて知り合いに配る」みたいな、とにかく数を消費する、ということをよくやった。
それ以外に、パーッとお金を使う方法がなかったのだ。
だから、吉原というのはそんなお金持ちが自らの消費欲や虚栄を充たす数少ない施設で、だからこそ独自の風習や文化を育てられた。
もちろん、当時の理不尽や不条理もたくさん取り込んで。
一方で、吉原で無事勤め上げた女性は、その後社会に割と受け容れられていたらしい。
「自分の嫁が元吉原の遊女だった」と自慢する人さえいたという。
風俗に勤めている・いたということが、現代でこれほどオープンにできるか?と考えると少し思うところはある。
歴史って、結局「今・現在」を知るためのもの。
展示の仕方や展示されなかったものも含めて、現代が色々見えてくる展覧会だと思う。