拝啓
先輩 殿
余寒厳しき折ではございますが、いかかがお過ごしですか。
早いもので、あれからもう20年近く経ちました…。
「お前の作ったホットケーキめっちゃ美味いな!!」
ボクが人生の迷子になって数ヶ月後、ある人物と出会いました。
それが先輩。
明るくポジティブ、破天荒に見えてどこか物事を俯瞰しているような、不思議な魅力を持った先輩。
世の中を全くわかっていなかったボクは、先輩の世界観や行動力に驚かされっぱなしで、刺激と興奮に満ち溢れた日々を送っていました。
カッコイイ先輩。
憧れの先輩。
男として尊敬出来る、そんな先輩に認めて貰いたくて、ボクはひたすら勉強しました。
お笑い、ノリ、流行りの服装、etc…。
そうするうちに、やがて先輩に認めて貰えるようになり、時にはライバル、時には尊敬の念さえ持って貰えるようになりました。
ボクに無いものを先輩が持っていて、
先輩に無いものをボクが持っている。
そんな関係性が心地良くて、何処へ行くのも、何をするのも一緒でした。
そんなある日、先輩がボクの部屋でくつろいでいると、「あ〜腹減ってきたなぁ」「ケイ、何かないん?」と聞いてきたので、当時スイーツ作りにハマっていたボクは、先輩にホットケーキをご馳走することに。
腕の見せ所です。
ボクの絶品スイーツで、先輩の腹と心を満たして差し上げようではありませんか!!
すぐさまIHコンロの電源を入れるボク。
生地を作り、手際良くフライパンへ流し込んでいきます。
『先輩、待っててください!!』
『いま超絶美味しいホットケーキを作ってますよ!!』
『必ずビックリさせてみせます!!』
心の中でそう呟きながら焼き色を確認するボク…。
芳ばしい香が漂ってきました。
ひっくり返すと芸術的とも言える焼き色が。
よし!!!
後は裏面を焼くだけだ!!
数分後…。
出来上がりました。
自分史上最高のホットケーキが!!
焼き色、形、香、どれをとっても超一級品(自称)です✨
『先輩!!お待たせしました!!』
「おぉ!!ケイ!!めっちゃ美味そうやな!」
『あざす!!さぁどうぞ召し上がってください!』
ボクの自慢のホットケーキを頬張る先輩。
一口目…
二口目…
「…………っ!!!」
「ケイ!!」
「お前の作ったホットケーキめっちゃ美味いな!!」
「カスタードも入ってるやん!!」
「めっちゃ美味いな!!!」
『………?』
『カ…カス…?えっ??』
一瞬先輩が何を言ってるのかわからなかったが、とにかくボクの作ったホットケーキに感動してくれているのは伝わってきました。
『あざっす!!!』
『お口に合って良かったです!!』
と、安堵の表情を浮かべたとき、先輩が口に運ぼうとしていたソレが見えてしまったのです!
ホットケーキの中からとろけ出るクリーム状のソレを…。
『……………先輩。』
『すみません…。』
『それ、カスタードじゃなく、半生(はんなま)っス………。』
急いで焼いた為に、中が半生(はんなま)の超絶気持ち悪いホットケーキを食べさせた
大阪・京都・神戸・紀伊萬天堂セラピスト
【ケイシ】です。
《 料理は愛情 》
形は違えど、先輩をビックリさせるという目的を果たせた上に笑いまで取れたので、結果オーライでした✨
けど、こういう結末を迎えられたのも【誰かの為に】という想いが詰まった行動だったからかもしれません。
セラピストとしての根幹を成す、その想いを胸に、ボクは磨き続けます。
筋肉を。
ケイシの写メ日記
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【追憶のカケラ】ケイシ