『お兄ちゃんが危ない!!!』
無我夢中でした。
勇者の剣を片手に持って…。
ボクには少し歳の離れた兄がいます。
幼い頃、よく喧嘩もしましたが、ボクはいつも大好きな兄にくっついて、どこに行くにも一緒でした。
「おばあちゃん子」だったボクと兄は、少し大きめのスーパーの中にある、祖父母が営むお惣菜屋さんへよく遊びに行ってました。
そこで「芋の皮剥き」や「鍋をかき混ぜる」といったお手伝いをしてお小遣いを貰い、お菓子屋さんへダッシュ!!
これがルーティンとも呼べるボクと兄の日常でした。
もちろんその日も…。
いつものお手伝いを済ませ、お小遣いをポッケにウキウキしながらお菓子屋さんへ向かっていたその時、なぜか急に兄が立ち止まり、誰かと話していました。
…見たことのない顔です。
しかも相手は5〜6人…。
『………お兄ちゃんどうしたん?』
『お兄ちゃん怒られてる???』
『お兄ちゃんも言い返してるけど…』
『……怖い…。けんか???』
そう思っていると、5〜6人の中の一人が、無抵抗な兄の胸ぐらを掴んで凄んできたのです。
それを見てビックリしたボクは、次の瞬間、猛ダッシュで祖父母のお惣菜屋さんへ向かって走っていました。
おもちゃ箱にある《勇者の剣》を取りに…。
ボクは信じていました。
悪者をバッタバッタとやっつける勇者の剣には不思議な力が宿っていると。
おもちゃ箱から勇者の剣を持ち出して走るボク。
涙目になりながら必死で走りました。
『お兄ちゃんが危ない!!!』
『お兄ちゃんを助けやな!!!』
その想いで無我夢中で走りました。
途中、向かいの八百屋さんや、隣の魚屋さん、祖父母の慌てる声も聞こえてきたのを覚えています。
「ケイシくん!!包丁持ってどこいくん!?」
「おばあちゃん!!ケイシくん包丁もって出てった!!!」
「これ!!ケイシ!!!待ちなさい!!!」
必死の想いで兄の元へ辿り着いた時に、その様子を見て只事ではないと思った八百屋のおっちゃんが仲裁に入り、結局、兄は事なきを得ました。
そして、呆然とするボクから勇者の剣を取り上げ、祖父母は大笑い。
………どうやらキラッと光る勇者の剣を、魚屋さんが包丁と勘違いして大騒ぎになったそうです。
「これ包丁と違うわww」
「ケイシのおもちゃやしょw」
「こんなん持ってどうするつもりやったんケイシwww」
『……だって、だってお兄ちゃん、お兄ちゃん助け…助けなって………』
言葉にならない想いと、収まらないドキドキと、ただただ怖くて…涙が溢れて…その場でギャン泣きするしかありませんでした……。
《昭和》と呼ばれた時代の、幼き頃のボクの記憶。
大阪・京都・神戸・紀伊萬天堂セラピスト
【ケイシ】です。
あれから月日は流れ、大人になった今のボクが言えることは、ただ一つ。
『武器を持つな!ダンベルを持て!!』
恐怖心や猜疑心、etc…
そういった負の感情が心の弱さを生み出し、そんな弱い自分を守る為に武器を手に取る。
No!!
男なら、己の精神と肉体を極限まで鍛えられる、ダンベルを持ちましょう。
無敵の精神力と筋肉。
「スベテ キタエレバ キミモ Perfect Body」
ケイシの写メ日記
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【Farewell to weapons】ケイシ