唐突
大叔父はめちゃくちゃ変わった人だった。独自の健康法みたいなものを次々に生み出していて、結果的に早死にだったけどいつも楽しそうだった。ハスキーより狼の血の濃い犬を百万くらいで買ってきて上手に手懐けていた。彼(犬)は僕にとてもよくしてくれた。
コンサルティングという言葉がない内からコンサル業を展開していて、時たま海外企業を国内に誘致したりしていた。旅行では基本的に誰も行かなさそうなところばかりに行ってはちゃんと帰ってきて、どういうものか分からない土産の品を玄関に置いて行ってくれたりした。
急死後の遺産整理では何も出てこなくて、資産の全てを使い切って消えて行ったことに大叔母様はただ一言、「よう分からん人やったわ」と言っていた。そこまで含めて僕には完璧のように思えた。
その大叔父に見たことの中で一番印象的できわどいものがあった。それが呼吸だ。
呼吸と言ってもヨガとかそういう呼吸法だなんだではなく、ぶっちゃけうまく説明できないかもしれぬ
端的に言えば大叔父は、半分くらい狼のハスキーと時たま喧嘩というか殺し合いをしてた
実際に噛まれて出血してたし実際に犬の喉をちゃんと締めて窒息手前までやってた
フライパンでちょいと殴っていたこともあった(完全に防戦のため)
狼犬 ウルフドッグと呼ばれる彼らは一年に一回くらいマジな挑戦をしてくるため
本気で向かい合って関係を再樹立する必要があるらしい(ほんとに)
そんな訳で大叔父は一年に一回、大体は最終的に、狼犬の首を窒息直前まで締めてた
んで「呼吸」のことなんだけど
僕の記憶が正しければ、狼犬はフィナーレの首締めの途中から
絶対に心地よさそうにしていた
単純に首絞めでドーパミンがドバドバと言うこともできるけれど
死に近づくことの命の呼吸が気持ちよさそうに
あと 関係性が大きく呼吸して生まれ変わろうとしていることに
深い安心を覚えているように見えた 思えた
一度現場に居合わせることができた時
途中から狼犬が抵抗をやめて
ただ静かに大叔父の目を見つめ返していた
大叔父も 締める力は強くしながら同じようにしていた
そんで最後の一歩手前で手を離し
命と関係性の深呼吸は終わって
二人とも気楽に気持ちよさそうだった
そこから数日は早朝に
リード無しで散歩とかしてた
狼犬は体を大叔父にどしどしぶつけてた
今自分は
自分のフェティシズムを告白している訳では決してない
ただ そう言う分かりやすいケースを通して
命も関係性も呼吸しなくてはならない
呼吸させなければならない と言うことを学んだ
少なくとも見た気がしている
命の呼吸はまず少し死に近づくことであったりして
具体的に窒息に嵌る人もあると思うし
またはオーガズムという現象にそのようなイメージを抱く人もあると思う 人によってはスポーツだ
そして関係性の呼吸とは喧嘩であったりドタバタであり
時に何もない凪のような静かなのかもしれない
うわむずい なんか伝わったかな
とあえず俺には具体的なレベルでのフェティシズムは何も無いけど
命と関係の呼吸は好きだと思います
じゃないと死ぬから
おわり
写真の手は凄く昔