彼は顔はそんなに男前ではないけれど
身長が高くて目立つから
学年でも中心のグループにいた。
僕は同じサッカー部で
3年間一緒に汗を流して、
試合になると
彼が3トップの真ん中センタフォワード、
僕が彼の右側でウイングという関係で
お互いに存在を意識しながら
息を合わせてプレーした。
彼はうちの高校では上手だったし
何より恵まれた体格から
放たれるキックの精度とパワーが凄くて
エースとして華があった。
それぞれ進学して社会人になってからも
サッカー部で集まる時には
地元の焼き鳥屋「まさや」でよく呑んだ。
歳を重ねるとそういう集まりも減ってきて
コロナ禍だったということもあって、
この盆休みに4,5年ぶりくらいに
彼に会った。
他の友達も含めて
仕事の話、家族の話、
あの女子は今どうしてるのか、
最近どんなエロいことしたのか、
会ってなかった時間を埋めるように
夢中になって話した。
そんな話をしながら
彼が被ってるキャップから
はみ出てるもみあげの部分が
彼にしては珍しく
薄く刈り上げられてることが
すごく気になった。
まあでもそんな髪型にすることもあるかと
そんなに気にせず呑み続けていると
彼がおもむろにキャップを脱いだ。
「お前、ハゲてもうとるやないかい」
フットボールアワー後藤はすごいですね、
このフレーズが反射的に出るくらい
人の脳みそに刷り込んでるんだもの。
彼がキャップをとったその瞬間に
僕の口から反射的にフット後藤ゆずりの
そのフレーズが口から出ていた。
その刹那、何を思ったか。
旧知の仲で気の置けない関係って
今のこのご時世、
めちゃくちゃ貴重で大切だなということ。
普通言えないじゃないですか。
モラハラやパワハラや言われるこの時代に。
あの当時のノリのまま
いじってみんなで笑い合えるって
なんて尊いのか。
本人もネタにして
それに全員でツッコんで爆笑するって
あのハチャメチャな時代を
一緒に汗をかいて
過ごしたからこそ成せること。
やっぱり
あの時代ってなんかすごいですよね。
10年後も変わらず「まさや」に集まって
今度は僕のハゲをネタに呑めると
そんな嬉しいことはないと思った
盆でした。
santuario永士
永士の写メ日記
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「お前、ハゲてもうてるやないかい」永士