初体験って聞くと、甘酸っぱさや初々しさ、ちょっとエッチな感じを思い浮かべる人が多いと思う。
ただ、世の中には絶望という名の初体験もあると言うことをご存知だろうか。
突然だけど、ナッツって美味しいよね。
コストコで売っている1kgのミックスナッツを買った日には2日で食べきるほど永遠と食べてる実績がある。
実はそれくらいナッツ達が大好き。
(太ったりニキビもとい吹出物が怖いので食べる量は学びました。)
友達と飲みに行く時は酒も飲まないくせにつまみっぽいものをやたら好んで食べ、特にミックスナッツを注文しておけば大人しいというのが友達のおれに対する認識で、その日も何も言わずにミックスナッツが注文されていた。
ノッポがその習慣を呪うことになるとは、この時まだ誰も予想していなかった。
いつも通りくだらない話で盛り上がり、皆もいい感じにお酒が回ってきた頃だった。
おれの隣に座っていたノッポが話の流れで別の友のことを笑いながら指差したのだ。
よくある光景。
ただ今回ばかりは指差しのために伸ばした手の場所がよくなかった。
こともあろうかミックスナッツを頬張り咀嚼しているおれの顔の前に指があったのだ。
しかも口先から10cm程度前に、だ。
そんなの咥えるでしょ。
だって棒が口先にあれば咥えしゃぶりつくのがセオリーというか、ワールドスタンダードだし。
まぁ、おれもそのセオリーに則って、おもむろに、当たり前のように、ごく自然に、目の前にある指をしゃぶるわけで。
ミックスナッツをドロドロジャリジャリに咀嚼しているその口で。
(ちなみに下戸なのでおれはシラフ。)
周りのメンバーが酒を飲む中、ノッポは息を飲む。
ドロジャリっと、マッドでポップな感覚を指先に、
天を仰ぎ見てOMGと言わんばかりに目の前の、目先の、というか指先の現実から逃げているノッポ。
おれはそんなことには当然かまわず、別のことを考えていた。
「あ、確かジャイアントコーンも食べたよな?あれは硬いし破片が指に強く擦れると痛いかもしれないからフェザータッチ気味にしないとダメかな?」
いつでも思考はエロスと共に。
これでもかと言わんばかりに丁寧に丁寧にドロジャリの舌を指に絡ませる。
歴史的瞬間の1ページを見逃すわけにはいかないと思ったのか、周りのメンバーの酒を飲む手も自然に止まる。
そろそろ頃合いか。
指を引き抜こうとするおれ。
その際、唇をピッタリつけたまま指を引き抜くと指が綺麗になってしまうので、それなりに指にナッツが付着した状態をキープできるように絶妙に唇を緩ませつつ、細心の注意を払いながら指を引き抜く。
悲鳴に近いどよめき。
滴るナッツ。
(未だかつてナッツが滴るという光景を目にした人がいるだろうか。)
初体験を終えたナッツまみれの(というかナッツが滴る)人差し指を眺める。
おれは一生忘れないだろう。
あの絶望に満ち溢れたノッポの顔を。
…というわけで、絶望という名の初体験をしてみたい方、お気軽にお申し付けください。
※ノッポ:大学時代の友人
彼とは頻繁につるんでいるため今後もしばしば登場すると思います。以後、お見知り置きを。
有馬 伊吹の写メ日記
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