【爪と罰】- 相馬みさき(女性用風俗amen)東京/性感マッサージ

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相馬みさきの写メ日記

相馬みさき

相馬みさき  (34)

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  • 爪と罰
    相馬みさき
    爪と罰

    切っても切っても際限なく
    両指の先で伸びるこの爪は
    いつも私の身の毛をよだたせ
    いつも私を心の底から
    落胆させておりました

    神経症のつもりはありませんが
    この爪だけはどうしても駄目で
    髪の毛や睫毛なんかであれば
    いくら生えても害はないのに
    この嫌らしく生え揃う爪は
    私の心機を逆撫で続けます

    誰かに当たれば切れて血が出る
    撫でたつもりがうっかり突き刺す
    思いもよらないところで誰かを
    傷つけてしまうかもしれない恐ろしさ
    大袈裟な言い方かもしれませんが
    まるで化け物の体の一部が
    この体から生えているようで
    誰を呪うつもりもないのに
    人を傷つけろと言われているようで
    見る度に虫唾が走るほど
    私はこの爪を嫌悪していました

    キリスト教のいうところの
    原罪というやつはきっと
    この爪のことを指しているのではないか
    そんな事を考えながら
    来る日も来る日も丹精込めて
    爪を切って磨いておりましたが
    いい加減埒が開かないと思い
    ついに私は高天原へ
    神との直談判に向かいました

    険しい道のりを這ってよじ登り
    全ては忌まわしき爪のためと思い
    ヘトヘトになりながらもようやっと
    私は神の御宮へ辿り着き
    その大きな門を叩きました
    親切に神座へ通して頂くと
    私は挨拶もそこそこに
    思いの丈を訴えます

    この爪をどうにかして下さいませんか
    私にこれは不要でございます
    襲うつもりも奪うつもりも
    私の胸中には毛頭ございません
    それどころか私はこれがあるせいで
    気安く人に触れる事さえ叶わない
    この爪は我々が太古の昔に
    畜生だったときの名残でありましょう
    だったらこれはもう我々ヒトに
    無用の長物ではございませんか

    私が懸命にそう告げると
    黙って鎮座していた神はまるで
    私が素っ頓狂を発したかのように
    顔を顰めてこう答えました

    お前が何のつもりかは知らんが
    それはお前がこの世を生き抜く上で
    間違いなく必要なものである
    お前が人であるなら尚のこと
    その爪が生死を分かつであろう
    それを研ぎ澄ませ振るう事こそ
    お前の生きる正攻法だ
    奪うことから逃げてはいけない
    争うことを忘れてはいけない

    私は唖然としてしまいました
    神様の仰るそのお言葉が
    何一つ理解できなかったのです

    この世は今太平の世だ
    国も富み文明も栄えた
    奪うことも争うことも
    旧世代的な仕来りだ
    神はその御心故に
    私を憂うのかもしれないが
    それはもはや取り越し苦労
    我々はもう蛮族ではない

    私がめげずにそう主張を繰り返すと
    どうやら神も根負けしたようで
    しぶしぶ私の両手足から
    爪を消し去ってくれました
    奇妙な見た目にはなってしまいましたが
    私はようやく霧が晴れたようで
    言いようのない喜びと安堵が
    内から湧き上がってくるのがわかりました

    神様に感謝の限りを伝え
    その場を去ろうとした際に
    神様は少し寂しげに言いました

    今のお前が信じる世は
    この地上のどこにもない
    それは私の至らなさに起因する故
    お前の妄信を責める事も諭す事もできない
    私の息吹にはもう力がない
    だからわたしはせめてお前の
    有意義な幕引きに努めよう

    やはり私には神の仰る意味がわからなかったので
    ただ有難うございますと伝え
    晴れ晴れと浮かれて帰路につきました

    もう化け物の片鱗は生えてこない
    意図せず誰かを脅かす事はない
    私はやっと自由になれた
    もう臆する事なく人と触れ合える

    根暗で引っ込み思案だった私は
    人が変わったように快活になり
    どんな仕事も小気味良くこなし
    最愛の人とも巡り合い
    順風満帆と呼ぶ以外にないほど
    幸福な人生を歩んでいました
    これも全ては全能なる神が
    この爪を取り去ってくれたおかげでした

    爪を切る苦労がなくなってからは
    歯を入念に磨くようになりました
    歯は内向きに付いているので
    爪ほど害悪ではありませんが
    これもいつか誰かを傷つけてしまうのではないかと
    ほんの少しだけ危惧していたのです
    また神様に申し伝えようかとも考えましたが
    今思えば
    もしもそんなことをしていたならば
    私には何の救いもなくなっていたことでしょう

    私が最愛の人との子宝に恵まれ
    産声を待ち侘びていたある日のことです
    うちへ帰れば見えるあの笑顔を
    今日も恋しく焦がれながら
    いつものように扉を開けると
    そこには何よりも大切なものが
    肉塊となって転がっていました
    声をかけても体を揺すっても
    それは惨めな赤い肉塊で
    腹らしき部分はご丁寧に裂かれ
    その中にあったはずの命には
    刃物が真っ直ぐに突き刺さっていました

    警察の方が仰るには
    これは快楽殺人と呼ばれるもので
    得体の知れない精液が
    膣中だけでなく胎児の全身にも
    これ見よがしにかけられていたそうです

    私は何もわかりませんでした
    警察の方の仰る意味が
    目の前に横たわる肉塊の意味が
    私には全くわかりませんでした
    呆然と発狂が入り混じる中
    私は一つ思い出しました
    そういえばあの時も
    何もわからなかった

    そうしてすぐさま理解しました
    ああそうか
    そうだったのか
    神様が仰っていたこと
    私の妄信
    私の無能さ
    この世がずっと地獄だったこと

    私はきっといつだって
    自分のことしか考えていなかった
    私が誰かを傷つけることで
    そこに悲しみを生むのが怖かった
    人に疎まれるのが怖かった
    しかしそんなことは本当は
    取るに足らないことだった
    私が真に守るべきものは
    私の恐怖心などではない
    奪ってでも争ってでも
    守らなければならないものがあった
    それはこんなにも脆いものだった
    なのに私は愚かにも
    それを守るための意思を捨てたのだ
    私のせいだ
    私のせいで
    全ての景色は地獄に戻った

    これが有意義な幕引きなのか
    それは神のみぞ知るところですが
    確かに私は間違えていました
    これがこの世の本意なのであれば
    私はもう二度と生まれてきません
    神様
    私のわがままを聞き入れてくれて
    少しの間でも夢を見させてくれて
    どうも有難うございました

    私に唯一残されたのは
    己に向けられたこの歯でした
    「なにもわからなくてごめんなさい」
    何より愛おしい血溜まりの側で
    イカ臭い正義に包まれながら
    私は舌を噛み切りました




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