一時期、お婆ちゃんの昔話を聞くのが病的に好きでした。
ここでは親しみを込めて「祖母」ではなく「お婆ちゃん」と言いましょう。
僕の実家は父方のお婆ちゃんと一緒に暮らしていました。僕のお婆ちゃんはタラの芽の天ぷらを作るのがとても上手です。
そんなお婆ちゃんは、よく昔の話をしてくれました。学生時代に流行っていた遊び、僕が子どもの頃のエピソード、戦後の日本の話。などなど。
でも僕が一番記憶に残っているのは、8年前に亡くなった僕のお爺ちゃんとの出会いについてです。つまり、おじじとおばばの馴れ初めの話ですね。
よく2人で喫茶店に行ってたんだ〜とか、どこどこで待ち合わせすることが多かったんだ〜とか、お爺ちゃんも昔はカッコよかったのよ、フサフサで〜とか。
それである時、2人の思い出の曲を教えてくれたんです。2人がひとつの部屋で一緒に聴いていた曲。
フランク永井『有楽町で逢いましょう』
「もう最近はもう全然聴かなくなっちゃったわ、、、」とお婆ちゃんは言うので、僕は善意のつもりでスマホのApple Musicからその曲を流してあげました。
僕とお婆ちゃんしか居ない静かな部屋に、哀愁感漂う官能的なイントロが流れ出しました。
そのとき、お婆ちゃんはとても切なそうな顔をしました。
「ごめんね、、、やっぱり今日はやめておこうかしら」
僕はすぐに音楽を止めました。
きっと、お爺ちゃんに逢いたくなって、寂しくなっちゃったのかな
その後、僕は一人で自分の部屋に戻って、『有楽町で逢いましょう』を聴きました。
熱い熱い恋の唄でした。この唄が無かったら、僕はきっと産まれてこなかったのかも。と思えるほどの。
山田 えいとの写メ日記
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No.174 時代の移り変わり山田 えいと