香りって時に記憶を蘇らせる事があるよね。
と海をボーッと眺めながら水平線に語りかける。
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とある日、本棚を整理中に祖父が孫である僕に向けてメッセージを綴った本があったのでパラパラとめくってみる。
僕は野球を習っていたのでそれにかけて【目の前のフェンスを追いかけるだけでなくその先にある未来に向けて精進して下さい。】
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ギラギラと照りつける太陽、、、コンクリートからは熱気がムンムンと全身を包み込む。
そんな汗が滴る日の夕方。ヒグラシの鳴き声と共に聞こえる吹奏楽の音…
〜プルプルプル〜ガチャ
『爺ちゃん…亡くなった。』
視界がぼやける…上を向いて我慢だ、我慢だ。。
グスン
瞬きと共に"悲しみの雫"が一滴…二滴
爺ちゃん、ごめん。。さい……ごめんなさい……ごめ……グスン
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『おい。。クソジジイ!!!鼻毛出てるぞ〜!!キャハハ…キャハハ』
『こらァァァァ!!!ジジイやない。。爺ちゃんと呼びなさい!!!』
実家の近所で住んでいたから爺ちゃんのとこへよく遊びに行った小学生の頃。
よくジジイと言って爺ちゃんをからかって、追いかけまわされていたな。。
爺ちゃん家に行き過ぎて母親からよく怒られていたな。。
だがそれに反して『いいじゃないか。なぁ薫。母さんはなんでそんなこと言うのか。ダハハ!!今日は泊まっていけよ〜』
爺ちゃんはいつも僕の味方だった。たくさんの笑いと幸せを与えてくれる。仕事で疲れた時もよくおんぶしてくれる元気な爺ちゃん。。
中学生にあがると野球部の練習や友達との遊びに忙しくなる。恋愛も初めて経験する。
爺ちゃんの家にあまり行かなくなる。
その頃から爺ちゃんの容態が悪くなっていってる事を片耳に入りつつ忙しくする日々。
母 『お爺ちゃん、具合悪いからちゃんと顔見せてあげなよ。爺ちゃん会いたがってるよ。』
僕 『分かったよォォ!!!!もううるさいな!!!!!!』
スポーツに苦手な勉強にストレスが溜まる時期で強く当たってしまう。。やるよ。やればいいんだろ?と頭では思うが、行動に移さない。
そんな時に母から訃報の連絡があった…亡くなったと。
感謝しても仕切れないほどのことをしてくれた爺ちゃん。入院中は激痛に耐えても声に出せない。意思を表現できない。タイムリミットが近づく事も自覚していただろうな。そして孫の顔を見れない寂しさ。手を握るだけでもいい。とにかく人の温もりを感じたいと思った時もあっただろう。そして『会いに来たよ』と孫の声も聞きたかったことを想像する。
グスングスン
ごめん。ごめんよ爺ちゃん。見舞いに行かなくて。。
涙が止まらない。瞼に元栓があったら閉めたいと思うぐらいに涙を流した。
机に水溜りが出来るほど…
人生最大の後悔を自覚した。
その時、ふと目に入った爺ちゃんのメッセージ付きの本。
そして現在。
爺ちゃん。俺は今、性産業に従事しているよ。この世界は素晴らしいし、僕の人生を救ってくれた。女性向け風俗店のセラピストとAV男優。。偏見をよく持たれる職業だけど俺は、これらに誇りを持ってる。この2つの世界を第一線で盛り上げる人になるよ!
フェンスを超えた先の未来…
大切な貴女との出会いの1秒1秒を真摯に向き合う。。楽しいこと嬉しいこと悲しいこと辛いこと…貴重な貴女との小さな一コマを丁寧に…そして一切の"悔い"がないように。
薫の写メ日記
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爺ちゃん薫