帰路
一人電車に揺られているとき
その日のプレイバックが
脳内に流れて
カメラフィルムを回すように
言葉、表情、しぐさが映し出される
あの時相手はどんな気持ちだったのだろう
伝わったのか
伝えてくれたのか
分からないことも多い
最寄駅に到着した
まだ余韻を感じる
カラダがポカポカと熱い
地上出口へ向かう
帰宅
家につき服を脱いで
室内着に着替える
伝えあった体温を
まだ肌が覚えている
しっとりと熱い
体温は伝わっている
体温は伝わっただろうか
余韻
冷蔵庫から炭酸水を取り出して
コップに注いで一口飲んでから
ベランダに出てタバコに火をつける
中央通りにクラクションが響き渡る
遠くに見えるビルの
屋上の点滅を眺めながら
夜風に当たる
一本のタバコを吸い終わるまでの間
この受け取った体温が
少しずつ冷めていくのを感じる
ふと昔のことを思い出す
家に着いたら
受け取った体温を
ぬるいシャワーで
冷ましていた
自分の体温にできなかったのだ
できなかったのではなく
しようとしなかったのかもしれない
果たして自分が伝えた体温は
相手にとって必要な体温だったのだろうか
温い水を浴びていたあの日を思い出す
今でも答えは分からないけれど
今だから分かることは増えてきたように思う
タバコを灰皿に捨てて
部屋に戻り電気を消す
かすかに残った体温を感じながら
目を閉じて一日を終える
LUST 佐藤充希
佐藤 充希の写メ日記
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体温佐藤 充希