「もう、家族にしか見えないから」
息子が生まれてから一年半が過ぎ、
ようやく歩けるようになった頃、
私の中の「女」は歩むことを拒絶された。
この2年近くは初めての「母」として生き、
文字通り全ての私を費やして、
母としての自我を、
石造りのお城のように、
一つ一つ丁寧に建ててきたのに…
「母の城」が完成するこの2年で、
「私の女」は風化していた。
あの夏の日、
旦那と白浜で作った砂の城は、
私の「女」だったのかな。
あの時は、
「崩れていくのも綺麗」だなんて、
笑顔で悦に浸っていたけれど、
自らが砂上の楼閣となった今、
笑顔も崩れ、
涙も乾いていた。
崩れ去った砂のお城は、
もう一度、建て直すことは出来るのだろうか。
これまで築き上げてきた私の砂粒を掻き集めて、
建て直すことなんて、
子育てよりも難しいことなのでは?
そんな旦那からの「風」を受けてから、
また一年半が過ぎ、
息子が幼稚園に通ってくれたおかげで、
学生時代の友達と会えるようになった。
テンプレ通りの女子会も、
日々の子育てから離れられる時間と思えば、
かなり幸せだった。
ただそんなテンプレな日々も、
旧友からの一言で破られた。
それは突風の様に私の「母の城」を壊し、
海風の様に爽やかな風を私の心に運んできた。
コレは底の見えない沼なのか、
どこまでも澄んだ希望の海なのか。
何にしても新しい風が、
私の「女」の背中を押して、
再び歩める様にしてくれる、
そんな希望に満ちた一言だった。
「ねえ、女風って知ってる?」
つづく?
作:santuario 麗
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麗の写メ日記
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【超短編小説】女が風化する時麗