地方に老夫婦が2人で営む喫茶店がある。
山小屋を思わせるウッド調の内装に
落ち着いた照明の広い店内で
古い掛け時計やアンティークの家具が
設えられている。
カウンターの中の壁には
一つ一つデザインの違う
カップアンドソーサーが
200個は収められている。
店内はコーヒーの香りで満たされていて、
注文が通ると店主のお父さんが
コーヒーを淹れて
お母さんが席まで届ける。
1人の青年が店に入ってきて
カウンターの奥に座った。
背が高くて髭面。
長髪だった髪をばっさり切って
ますます男らしさに磨きがかかっている。
ファッションには気をつかうタイプで
服を買うことが彼のストレス解消法だ。
彼は故郷に帰省するたびに
この喫茶店に立ち寄る。
玄関をくぐる時に薫ってくる
香ばしい香りを嗅ぐと
故郷に帰ってきたなと安らげるからだ。
いつも通り、重めのコーヒーを注文して
一息つく。
店内は禁煙だから
タバコを吸いたい時は外に出て吸う。
店主とは話さない。
店主も話しかけない。
音楽がかかっていない店内には
店主がコーヒーを淹れる作業音が
BGM代わりに聴こえるだけ。
都会での生活に不満はないけれど
帰省するたびにここを訪れるのは
日々の生活が張り詰めていて
落ち着いた心休まる穏やかな時間が
少ないからだろう。
ほんのひととき
日常からかけ離れた異世界に
脳を浸しゆるめて
また日常に戻っていく。
「よし、凱さんの粗引ポスを好きになろう」
santuario大阪 永士
永士の写メ日記
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【故郷の香り】永士