結構前の話(コロナ前)になるのだけど、平田オリザ先生が演出した芝居を見に行ったことがある。
とても不思議なお芝居で、一言で言えば群像劇。
舞台の上で複数の役者が会話を交わし、複数の物語が進んでいく、というもの。
複数同時進行で流れていく会話があって、どれか一つに集中しようとすると、あっという間に物語についていけなくなってしまう。
なので、必然的に漠然とすべての会話をBGMみたいな感じで鑑賞することになる。
そうすると、不思議なことに全体の物語が見えてくる。
はじめて見た時は首をひねりながらの鑑賞だったけど、今なら、平田先生が狙っていたことが分かる気がする。
つまり、頭でストーリーを追うのではなくて、もっとぼんやりと、全体を感じるような芝居を作りたかったのだと思う。
これは結構重要なことで、何か一点に集中している時というのは、実は自分の狭い世界に閉じこもっているのとほぼ同じ。
マジシャンが「よく見ててください」とか、それに類することをよく言うのは、人間は集中しているときが一番騙されやすいからなのだ。
人間の最適な状況というのは、一点ではなく、もっと広い範囲をぼんやりと集中すること。
これは性感やマッサージの時も同じで、相手の人に入り込みすぎるのは、実はあまりよくない。
特定の部位だけじゃなく、その人だけじゃなく、もっと広い、全体を捉える。
なんとも漠然とした話に聞こえるかもしれないけれど、僕が目指しているのはこういうところだったりする。
市村三座 東京遠征
7月12日(金)~14日(日) 10:00-23:00
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