前回は「燃え尽きの原因は仕事が人生にとって重要という資本主義的な価値観」だと述べた。
じゃあ、燃え尽きを防ぐには?
燃え尽きを今感じている人はどうしたらいい?
多分、必要なのはその価値観に自覚的になること。
そして、それと対立する別の価値観をもつこと。
「なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか」では、そういう別の価値観を持っている(ちょっと極端な)人たちも紹介している。
その一例が、砂漠で暮らすベネディクト派の修道士たち。
彼らは、食料を得るための最低限の仕事をし(「働かざる者食うべからず」は聖書の言葉!)、その後は6時間ひたすら祈りを捧げる。
なぜなら、食料を得るのは「働き」あってだが、「人間の尊厳」は神によって保証されているから。
「仕事ができる」ことは、神に比べれば遙かにちっぽけな個人の才覚にすぎないから、これで人間の尊厳を保とうとしてはいけないのだ。
だから、そういう「仕事ができる」という小さな自尊心を捨て、絶対の神にかしづくために、修道士はひたすら祈る。
これは、すごく極端な例だし、6時間祈ることを「しんどい」だけではなく「正しくない」と感じる人もいると思う。
でも「正しさ』をある意味追い求めた先に待っているのが「燃え尽き」という現象なのだ。
ただ一つの価値観、ただ一つの正しさの尺度しか持たないと、この世界は人をすぐに疲弊させてしまう。
仕事が好きでも、それによって燃え尽きてしまうこともあるし、その仕事から離れることで、見えてくることがある。
そんな風に新たな世界の見え方を教えてくれたからこそ、この本はすばらしく「良い本」だと思う。
なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか