「筋肉というのは動くのが仕事なんだ」
父親にマッサージを教わったとき、一番最初に言われたことがこのこと。
「だから、筋肉がコる原因というのは『動かしすぎ』じゃない。『動かさないこと』が原因なんだ。で、硬直するとまた動けなくなる。悪循環だろう?」
ニヤッと笑ったように思う。
父親は、ほとんど思いつきで話をする。
ただ、ごくたまに理路整然と話をするときがあって、そういうときは、大抵いつもより面白そうな顔をしている。
「悪循環はいっぺんには断ち切れない。マッサージは外科手術ではないんだ。悪いところを切り取って終わり、というわけにはいかない。すぐに効果を求めなくていい。やり続ければ、効果は出る」
その後、どれほど多くのことを学んだだろう?
細かく挙げていけば、100や200は簡単に書き出せそうだけど、本当に大切なことは、そんなに多くないという気もしている。
つまり、細かい部分に拘るのはあんまり意味がなくて、大原則を抑える。
それを元に動く。
細部の知識はいくらでも変わりうるけど、幹の部分はなかなか強固だ。
別の何かに取って代わられるのは、そんなに簡単じゃない。
だから、細かいことより、大原則から。
後は自由に。
確かに、こうしてみると、この部分は最初に学んだ頃から、あまり変わっていないのだよな。