詫び寂びという言葉を知っているでしょうか。これも日本語にしかない単語だと言われ、外国語には訳しにくいと言われていますよね。これは、日本特有の美意識を表現する重要な言葉だと思います。日本庭園や苔、茶の湯、茶器、あらゆるものに詫び寂びを感じられるものですが、そもそも侘び寂びとはどういう意味なのでしょうか。
詫び寂びの「詫び」は、つつましく質素なものにこそ趣があると感じる心のこと、そして「寂び」は時間の経過とともに現れる美しさを指しています。この世のモノは必ず衰えていきます。人間も必ず年を取っていきますが、モノも変化していくわけです。簡単に言えば、「経年劣化している」と言えばわかりやすいでしょうか。しかし、それを否定的に捉えるのではなく、肯定的に捉えているんですね。モノは時が経つにつれてどんどん変化します。しかしそれは「劣化」ではなく、「美しく変化する」と捉えるんです。
海外では豪華さなどが重視されることもあり、日本の詫び寂びに感じる美意識とは少し異なるところがあるともいわれます。しかし、このような日本特有の美意識は絵画や美術工芸品、禅などにも大きな影響を与えていると思うんです。例えば、満開の桜もきれいですが、葉桜もきれいだと思いませんか?日が沈む頃、空がオレンジ色に輝き、その切なさに詫び寂びを感じる、そんなこともあるでしょう。
僕たち人間も年を取ります。しかしそれを否定的に考えるのではなく、「年を取って趣が出てきた」「味が出てきた」と言えるような年の取り方をしたいものです。