僕たちの生活になければならない時計。世界で時計の先端を行く国と言えば、スイスを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし実は、そのスイスは市場の独占を試み、日本からの反撃を食らって経済的損失を負った過去があるんです。
スイスの時計産業は、16世紀にその基盤を作り上げます。スイスのジュネーブを中心に宗教改革が起こり、「贅沢品を使ってはならない」との教えから、宝石職人たちが時計の開発に乗り出したことで、スイスの時計産業は大きな飛躍を遂げたんですね。
20世紀に入り、スイスは世界に時計のブームを巻き起こします。さらに他の国の時計製造のサポートに乗り出し、高品質な部品を輸出し始めました。こうして、ヨーロッパやアメリカを手中に収めていったのです。
そこで本格的に時計産業に乗り出した国、それが日本でした。当時はまだまだ部品をスイスから輸入していましたが、それでは価格が高い。そこでセイコーは、アメリカの大量生産方式を使い、スイス部品を組み込んで、日本の職人技にて独自の時計を作ろうとしたのです。 高品質で低価格な日本の時計が国際市場で注目されるようになり、スイスが独占していた時計産業に陰りが見え始めました。そこでスイスは、海外への時計や部品の輸出量を制限し、部品の輸出には高額な費用をかけるなどの対策を行うことに…
それを受け、セイコーは、スイスに依存しない、独自の部品を作ることに決めます。スイスの政策が眠れる獅子を起こしてしまったと言っても良いでしょう。さらにセイコーが東京オリンピックのタイムキーパーになったこともあり、セイコーの時計開発は勢いを加速させます。そこでできあがったものが、クオーツ電子式腕時計でした。
スイスの時計以上に精度が高く、シンプルな構造で部品点数が少ないこともあり、大量生産も可能で、メンテナンスコストも低い。さらにセイコーは、クオーツ技術の特許を公開し、他のメーカーもこの時計を制作できるようにしました。これにより、スイスは約8,800億円の経済損失を出したとも言われています。
しかし、今度はスイスがクオーツ式の時計を作ろうとしても、スイスの伝統的な機械式時計を作り上げてきた職人たちがその流れを受け入れず、クオーツ式の制作には困難を極めたそうですよ。実際に日本やアメリカの大量生産方式には勝てず、スイスでは多くの企業が合併・倒産したそうです。
改めて、日本の技術に脱帽してしまいますね。