仁の写メ日記

名古屋からの帰り道、新幹線を降り
て、ふと時計を見るともう22時すぎ。


在来線の乗り換えに向かってホーム
を歩いていると、ふわりと漂ってきた、
香ばしいコーヒーの香り。


その豊かな香りに、思わず足が止まった。


すぐ近くに、小さなコーヒーショップ。
冷たく冷えた、炒りたてのアイスコーヒ
ーでリフレッシュしたいな……


そう思いながら遠目に店内を覗くと、
どうやら閉店間際の様子。


『これは、今日はもう帰りなさいって
いうサインかな』そうつぶやきながら、
ほんの少し惜しみつつ、


背を向けかけたその時.......
背後から、ひとつの声が届いた。


『すみません、先どうぞ。』


わずかに遠慮がちでありながらも、
ちゃんと届く声。


振り返ると、そこには若い男性が、
こちらに穏やかに視線を向けていた。


自分のほうが先にいたのだから、
ごく自然なやり取りといえばそれまで
だけれど、


その声の調子も、立ち姿も、
どこかに『丁寧さ』が滲んでいた。


『ありがとうございます』
そう返すと、彼は静かに軽く会釈をして、
後ろで待ってくれていた。


……それだけのこと。
なのに、なぜだろう。
ほんの少し、心がふわっと緩んだ。


きっと彼は、僕のことなんて何も
知らないし、僕も彼の顔すら、すぐに
思い出せなくなるかもしれない。


でもきっと.......
誰にも気づかれないような、やさし
さって、ちゃんと誰かに届いてるん
だなって。


帰りの電車の揺れのなかで、
そんなことを、ぽつりと考えていた。


今日は、そんな出来事を、
どこかの誰かに、ちょっと伝えたく
なって。

　

どうか、あなたの今日が、
静かに、心地よく、やさしさに
包まれた一日でありますように。

　



なんて、ね（笑）




露花♪仁（じん）