――じんの日記より
※あくまでも「じんの日記」は半分嘘で半分実話です。
夜の公園って、どうしてこんなに人の心を緩めるんだろう。
空気が冷たくて、静かで、少しだけ寂しい。
でも、そんな空気が嫌いじゃない。
さっきまで一人だったベンチに、ふわりと誰かが座った。
少し離れたところ。近すぎず、遠すぎず。
香水じゃない、柔らかいシャンプーの香りが風に混ざって流れてきた。
…たぶん、彼女もこの空気が好きなんだろう。
僕は缶ビールをひと口、
彼女はレモンサワーの缶。
彼女は少し驚いた顔をして、でもすぐに微笑んだ。
その笑顔が、なんだか、ずっと前から知っていたような気がして。
少しだけ、話をした。
名前は聞かなかった。
連絡先も交換しなかった。
ただ、帰り際に彼女が言った。
「またこの時間、歩いてみようかな」って。
それが何を意味していたのか、まだ分からない。
でも僕は、明日もたぶん同じ時間に歩く。
偶然を信じるふりをして、ちゃんと準備して。
夜の散歩でしか会えない人がいる。
そういう関係も、悪くないと思ってる。
…ところで。
みんなは、夜の公園を歩いたりする?
たまに、会えたらいいのに。
Story-じん