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くろの写メ日記

  • 【ほのぼの短編小説『上立ち香』】
    くろ
    【ほのぼの短編小説『上立ち香』】

    -Kuro’s Diary-
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    著者:くろ
    出版社:Story

    ※あくまでフィクションです。物語としてお楽しみください٩( ’ω’ )


    『ほのぼの短編小説』-“上立ち香”



    秋の風が心地よく吹き始めたある日、私は、彼女の匂いを思い出していた。

    五年前、彼らが初めて出会ったのは、この同じ季節だった。

    澄んだ青空の下、彼女はひまわりの花束を抱え、笑顔で私に近づいてきた。その瞬間、私の心は彼女の魅力に一瞬で奪われた。

    彼女の髪は、優しいブロンド色で、軽やかな風に揺れていた。その香りは、彼女自身が作る芳香剤のようで、甘く、少しフローラルだった。

    それはまるで、春の花々が満開に咲く初夏のような、心を解きほぐすような香りだった。

    二人の思い出は、陽だまりの中での笑い声や、無邪気な争いごと、時には真剣な話も交わされた。

    けれど、彼女はある日突然、どこかへ消えてしまった。

    私は、彼女が自分に何を感じていたのか、最後まで分からなかった。彼女が去った後、家に残された濃厚な香りだけが、かすかな記憶として彼の心の中に残った。

    その日、私は古いアルバムを引っ張り出してきた。ページをめくるたび、彼女との楽しい瞬間が鮮やかに蘇る。

    そして、彼の鼻に、あの独特な香りが再び漂った。あまりにもリアルなその匂いに、彼の心拍が速くなり、昔の感情が抑えきれないほど沸き起こってきた。

    「もう一度、会いたい…」

    その瞬間、私は決意を固めた。彼女が好きだった場所、二人がよく訪れた公園へ行くことにした。

    薄曇りの空の下、私は歩き始めた。周囲には落ち葉が舞い散り、彼女と共に見た風景が幽霊のように彼を包み込む。

    公園に着くと、記憶の中の彼女がそこにいるかのように感じられた。私は深呼吸をし、目を閉じてその香りを思い出そうとした。

    すると、風が彼の頬を撫で、その瞬間に彼女の香りが漂うのを感じた。つぶやくと、その声は風に乗って消えていった。

    その日、私はただ彼女を思い出すだけでなく、彼女の存在を再確認することができた。

    彼女は物理的には私のそばにいないかもしれないが、私の心の中で色あせない思い出と香りとして生き続けていた。

    私は、その思い出を大切に、彼女の香りを胸に次の一歩を踏み出すことにした。

    遠くの空に太陽が顔を出し、明るい光が彼を包む。彼女の香りが、彼の新たなスタートを優しく後押ししてくれたのだった___。

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