毎朝、駐車場に行くと必ず顔を合わせる友だちがいる。
近寄ってから目線をあわせてタッチするのが恒例だ。
その日は、タッチをせずになにやらポケットをモゾモゾとさぐり始めていた。
出てきたのは、ウエハースのお菓子についてくるキャラクターシール。
人気漫画の主人公だ。
「すご、光ってるじゃん。」
「よく当てたね」
とかなんとか話しかけていると
その小さな友だちは、ニコニコしながらそれをぼくの手のひらに置いた。
「金ピカのルフィなんておれ初めてみたよ。すごいじゃん」
と手に置かれたそれを返そうとすると
「また当てるからあげる!」
と元気よく走り去られてしまった。
駐車場にひとり取り残され立ち尽くしていると
彼との先日の会話をおもいだした。
「次でるシリーズで先にレア当てたらあげるね」
なにげなく彼と交わした約束だったけど
先を越されてしまった。
ぼくらは、同じキャラクターがすきで仲良くなった。
そこからお店で見かけると年甲斐もなく駄菓子をひとつ買うようになった。
さておき、彼にとって大切なレアシール。
小学生にとって、ウエハースひとつ買うにもかなりの出費だ。
躊躇いもなく他人にあげられるその優しさは自分にあるだろうか。
ふと、やなせたかしさんのアンパンマンが頭をよぎる。
アンパンマンは、困っている子どもに自らの顔を食べさせる。
「おなかが すいたろう。さあ、ぼくの かおを かじりなさい」。
空腹の人に食べ物を分け与えることこそが「覆らない正義」と信じられている。
次会う時は、大人のチカラをつかってあいつのすきそうなキラキラを用意しておこう。
しばらくウエハースを見るのがいやになるかもしれないけれど。
窓から陽射しの差し込むなか、テーブルに置いたスマホの裏面がキラリとおだやかに反射している。
安室 蘭の写メ日記
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安室蘭の雑感7安室 蘭