この日記は、過去を振り返りながら、
僕自身が当時の気持ちを思い出しつつ、
事実を書いています。
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就職活動中、電車に揺られ、くたびれた姿のサラリーマンを見て
「ああはなりたくない」と思っていた。
今、その時着ていたスーツを着て、
履き慣れない革靴とビジネスバッグを持ち、
面接会場に向かう僕がいる。
29歳。
まさか、この歳になって
就職活動をするとは思ってもみなかった。
面接時間は11時。
通勤ラッシュを過ぎた電車は、
混んでいるわけでもなく、
サラリーマンの姿もまばらだった。
「どんなことを聞かれるのだろうか?」
不安で仕方がなかった。
この年齢になるまで、
役者をやっていたことはマイナスにしかならない。
なぜ辞めたのか?
他人から見れば、
夢を諦めたただの負け犬に映るかもしれない。
実際はそうかもしれないけど。
隠し事をしてもしょうがない。
僕は腹を決めて、
何でも正直に答えようと思って面接に臨んだ。
ただ、少なからず自信があった。
自分の作品をネットで知り合った
デザイナーの友人に見てもらった時、
「僕とは領域は違うけど、これならいけるんじゃない?」
と言われていたからだ。
面接会場には10分前に到着。
順番を待っていると、
「次の方、どうぞ」
呼ばれて部屋に入る。
七三分けの、いかにも仕事ができそうな男性が
テーブル越しに立っていた。
年齢は35歳くらいか。
にこやかな笑顔の裏に、鋭い眼光を感じる。
名刺には「取締役」の肩書。
面接は自己紹介から始まり、
志望動機やこれまでの経験を聞かれた。
僕は正直に答えた。反応は悪くない。
驚いたのは、彼が僕の話を驚異的なスピードで
タイピングしていたことだ。
僕が話した内容を、瞬時にパソコンに記憶させていく。
僕もタイピングには自信があるが、
彼の速さには本当に驚いた。
「仕事していれば、これくらいにはなるよ」
そう微笑みながら言った。
彼は僕に、少なからず興味を持ってくれたようだった。
どうやら、同い年ということだったからみたいだ。
「同じ年なんですね。この年で取締役なんて凄いですね!」
そう僕が言うと、
「いやいや、今はそうだけど、人生いつ逆転されるかわからないからね」
はにかみながら彼は言った。
面接の後は実技試験。
『Tokyo Walker』の表紙デザインを再現するという課題だった。
この雑誌には、モデル時代に出演したことがあり、
何か運命を感じた。
慣れない環境、慣れないパソコン、使い慣れないフォントに苦戦しながらも、Windows作業に慣れている僕にはアドバンテージがあった。
制限時間内に半分ほど仕上げ、まずまずの手応えを感じた。
試験終了後、
人事の方と少し話す時間があった。
その時に採用枠について質問した。
「30名ほど面接し、採用は1名です」
採用は少数と書いてあったが、まさか1人だとは……。
それでも、やり切った充実感があった。
最後に丁寧に挨拶をし、会場を後にする。
合否は電話での連絡とのことだった。
三日後、電話が鳴った。
あのデザイナーの面接を受けた人事担当者からだった。
「雪村さんですね。おめでとうございます! 採用になりました」
思わず声を上げて喜んだ。
これで少しは社会的価値のある人間になれる。
人事担当者が続けた。
「ただし、正社員採用ではなく、
アルバイトからのスタートになりますが、
よろしいでしょうか?」
実務経験がないことがネックになったらしい。
そんなことは、どうでもよかった。
デザイナーとして仕事ができるのだから。
しかし、少し欲が出た。
「わかりました。ただ、募集要項は正社員でした。
アルバイトから社員にはなれるのですよね?」
「はい、試用期間中はアルバイト契約となります」
「試用期間は何カ月ですか?」
「三カ月です」
「では、問題なければ四カ月目からは社員ということですね?」
「その予定です」
「わかりました。よろしくお願いします」
社員登用までの仮約束を取り付け、
電話を切った瞬間——
「やったー!」
思わず大声を上げた。
応援してくれたデザイナーの友人も、
僕の報告を聞いて喜んでくれた。
こうして、晴れて社会人としての第一歩を踏み出す。
サラリーマンになりたくないと思っていた時から8年。
まさか自分がサラリーマンの道を選ぶとは。
遅れてきたルーキー。
デザイナー・雪村の誕生である。
(つづく)
雪村 凪( ゆきむら なぎ )
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雪村 凪の写メ日記
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雪村凪物語 〈第14話〉サラリーマンへの道雪村 凪