男三人兄弟の真ん中。
このパターンは、
大抵ヤンチャな子供になるものだが、
僕ももれなくその分類だった。
活発で、足が速くて、勉強もできる方。
みんなを引っ張り、
何でも先頭に立ち、
負けることが大嫌いだった。
通知表には「優」が多かったが、
必ず「落ち着きがない」と書かれていた。
今だったらADHD(注意欠陥多動症)
と診断されていたかもしれない。
でも、本人としてはみんなを巻き込んで、
楽しく遊んでいるつもりだった。
ある日の中休み。
教室に戻ると、真ん中に椅子が置かれていた。
先生にそこへ座るよう促される。
僕を「裁判」にかけるというのだ。
「僕に嫌な気持ちをさせられた人、手を挙げて」
と先生が言うと、
ほとんどのクラスメートが手を挙げた。
仲良く遊んでいたと思っていた友達まで——。
その日を境に、
野球やサッカーに誘われることはなくなった。
声をかけても、仲間に入れてもらえなくなった。
親にも相談したが「お前が悪い」と逆に怒られてしまった。
それから僕は、先頭に立つことが怖くなった。
欲求を抑え、人が嫌がることをしないよう、
慎重に振る舞うようになった。
それから程なくして、
友達との関係も少しずつ良くなり、
また遊びに誘ってもらえるようになった。
大人になった今、
目の前の人の気持ちを考えながら、
楽しい時間をつくることに
意識を向けられるようになったのは、
あの学級裁判があったからだと思うことがある。
しかし、誰かを追い詰めたり、
傷つけたりするような方法で気づきを与えることは、
決して良い方法ではないと思う。
先生はもうこの世にはいない。
あの経験は辛いものだったけど、
間違いなく自分を成長させてくれたものでもあった。
今改めて感謝を伝えたい。
雪村 凪(ゆきむら なぎ)
雪村 凪の写メ日記
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学級裁判雪村 凪