小さい頃、父と豆まきをした。
父は大きな声で、
「鬼は外、福は内」
といって、豆をまいた。
僕も父に合わせて声を出し、
思いっきり豆を投げる。
外は雪。
豆は音もなく、暗闇の中に消えていった。
中学生になって
豆まきが恥ずかしくなった。
父は相変わらず大きな声で
「鬼は外、福は内」
と言って豆をまく
僕は黙って、
ただポイと豆を投げるだけだった。
社会人になって、
節分に太巻きを食べる文化があることを知った。
黙って、吉方を向いて食べるらしい。
現在、豆まきよりも、恵方巻きの方が
主流になってきている。
節分になって思い出すのは、
あの大きな掛け声だ。
いまやったら、近所迷惑になってしまうだろう。
でも、良い時代だったなとも思う。
帰り道。
灯りの方をみると、
豆まきをしている家族の声が聞こえた。
父は今年で80歳になる。
また一緒に、豆まきがしたくなった。
雪村 凪(ゆきむら なぎ)
雪村 凪の写メ日記
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豆まき雪村 凪