昔、大阪のUSJで半年ほど仕事をしていた時期がある。
出張でパレードの車を制作する仕事だったのだが、
会社が貸してくれたマンスリーマンションでの出来事を語りたい。
10年近く前になるが、
難波から徒歩10分くらいにあった
3LDKのマンションに、
当時務めていた会社の社員が、
僕を含め6名でルームシェアをする形になった。
6人とも
割と歳も近い男同士だったので、
夜な夜な難波で飲んだり
部屋で飲み会を繰り広げて毎日が過ぎていきました。
そして、
あと1週間ほどで東京へ戻る、
そんな夜の
宅飲みの時に事件は起きました。
6人の中で
1番年上の兄貴分がぽつりと呟いた。
「もうすぐ引き払うから言うけど、
実はこの部屋出るんだよね。」
聞けば実家がお寺で、
先祖代々、
人の形として霊が見える家系だそうで。
僕は気になり、
「えっ、どんな感じの霊がいるんですか？」
その人に問いかけた瞬間……。
『バンバンバンバンバン！！！』
窓を平手で叩くような
音が響き渡った。
その部屋は3階の角部屋で、
部屋に対してL字型に窓がある採光性の高い部屋であり、
そのL字のラインをなぞるように窓を叩かれた。
ただ、
窓はあるがバルコニーは無い。
よって人がイタズラで叩くのは
空を飛べない限り不可能である。
10秒弱くらい音が鳴り止まず、
「五十嵐くんごめん、
怒らせちゃったみたい。
ちょっと待っててね、
ムンッ！！」
その兄貴の一言で、
音がピタリと止んだ。
普通に考えて異常過ぎる事態だが、
不思議とその時は
なぜか怖くなかったのも覚えています。
兄貴のざっくりとした説明で、
僕らがいる部屋が
ちょうど霊の通り道と言われる
いわゆる霊道だったとの事で。
それ以上は話したく無さそうだったし、
後から急に怖くなってきて
それ以上誰も話は広げず
その日は眠りにつきました。
後日わかった事ですが、
その昔、マンションの近くの
千日前という場所で、
たくさんの人が亡くなったビル火災があったそうです。
その事故が関係しているのかは
今となってはわかりませんが、
もしそうだとしたら
あの日の出来事は
何かのメッセージかもしれない。
灼熱の炎に焼かれながら
命を落とすのは、
どんなに無念で辛かったであろうかと。
僕は今の本業で、
住宅設備や防災関連の仕事をしているのもあるのですが、
人災で人が亡くなる事件が
少しでも減ればいいと思いました。
天災と違い、
人災は防げた事故なので。
亡くなられた方々へ
ご冥福をお祈りします。
五十嵐 清隆
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