ことばにも、
期限があるのだろうか。
消費期限の短い食品のように、
新鮮なうちに受け取らなければ
どこか酸っぱくなり、
棘が目立ち、
心に届かなくなる言葉がある。
一方で、
賞味期限が長い食品のように、
少し時間が経っても
じゅうぶん味わい深い言葉もある。
その時は気づかなかったけれど、
ふと思い出したとき、
「あのひと言が、今になって沁みる」
そんな言葉たちだ。
そして稀に出会う、
熟成タイプの言葉。
最初はピンと来ず、
むしろ苦味すら感じたものが
時間と共に旨味を増し、
数年後に別格の深みをもって現れる。
僕は思う。
言葉は“消費”されるためだけのものじゃない。
誰かの心の中で発酵し、
その人なりの解釈で味わわれ、
新しい力を持つことがある。
美味しい料理が、
ひと口で人を幸せにできるように。
自分が選ぶひと言が
誰かの世界の味を少し変えることがあるなら。
今日も僕は、
言葉をひとつ、
丁寧に仕込みながら生きてみる。
秋山 純士の写メ日記
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『賞味期限のない言葉を』秋山 純士