汗ばむ季節になると、
ふとスパイスの香りが恋しくなる。
それは食欲のためだけじゃない。
少し気だるく、単調になりがちな日々に、
“何か”を加えたくなるのだ。
ちょっとした違和感や刺激、
言葉にならない香りや気配。
そういうものが、
心の感覚をそっと起こしてくれる。
毎日がルーティンになってしまったとき、
無意識のうちに、同じ景色しか見えなくなっていく。
思考も選択も、決まりきった味になっていく。
楽で、安心。
けれど、“何か”が足りない。
ほんの少し、
いつもとは違うものを足してみる。
一日一回でも、週に一回でも、
“普段の自分なら選ばない何か”を選んでみる。
強くなくていい。ほんのひとつまみでいい。
ピリリと舌を刺激するような存在が、
心の奥をふいに動かすかもしれない。
そのスパイスは、
言葉だったり、景色だったり、
あるいは──
誰かとの、静かなふれあいだったりもする。
何気ないやりとりが、
じんわりあとを引いてくる夜。
思い出したときに、
「ああ、あれがスパイスだったんだ」
と気づくかもしれない。
たかがスパイス。されどスパイス。
必要なのは、ほんの少しの“異物”。
いつもの日常に、
もう一段階奥行きを加えるための隠し味。
明日から7月。
今年の夏は、
あなたの世界を引き締める新たなスパイスを。
そのスパイスって、もしかしたらぼく?
──なーんちゃって。
秋山 純士の写メ日記
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『夏こそ、スパイスを』秋山 純士