密室がもつ、ふたつの意味。
外界から遮断された「閉ざされた空間」、
それゆえに生まれる「解き放たれる感覚」。
“二人きり”の空間、時間。
他人の目も、喧騒もない──
ただそこに在るのは、
ふたつの呼吸と、ふたつの体温だけ。
性というものを語るとき、
どうしても「快楽」や「興奮」という側面が強調されがちだ。
それは間違っていない。
けれど、その手前に、
「触れる前の気配」のような、
繊細で静かな感覚がある。
指先のほんのわずかな震え。
抱き寄せたときのほんの少しの迷い。
唇が触れる寸前の言葉にならない呼応。
それらはどれも、
“開いていくプロセス”そのものだ。
性とは、単なる欲の発散ではなく、
閉ざしていた感情が、
少しずつ溶けていく過程でもある。
人は誰でも、
心に小さな鍵をかけて生きている。
簡単に開けられない扉もあるし、
そもそも扉の存在に気づいていない人もいる。
けれど、“ふれあい”の中で、
ふとその扉が軋み始める瞬間がある。
それは、大きな音を立てるものではない。
静かに、ゆっくり、ほんの少し開く──
それが「閉ざされた解放」だ。
言葉を重ね、
手を重ね、
時間を重ねる。
目に見えないものに、触れる。
その中にこそ、
肉体を超えた“もうひとつの快楽”が、
静かに宿っているのかもしれない。
秋山 純士の写メ日記
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『閉ざされた解放』秋山 純士