月が完全に闇に沈む夜がある。
2025年6月25日──新月。
空に浮かぶはずの月は、姿を消す。
だが、それは存在しないのではなく、
ただ“見えない”だけだ。
新月とは、“ゼロ”の構造。
何もないようで、
すべての始まりがそこに在る。
人の心もまた、月に似ている。
光を放っているときばかりが本質ではない。
むしろ、見えないときにこそ、
その「輪郭」が研ぎ澄まされることがある。
ふだん意識されない感情。
声にならない欲望。
過去でも未来でもない、
時間の“狭間”にひそむ直感。
新月の夜は、
そうした「見えないもの」に形を与える
聖なる夜でもある。
満ちていくために、
いったん欠ける。
新月を通過して、満月が存在する。
誰かと過ごす時間のなかで、
言葉を使わずに共有される感覚があるとすれば──
それは、この“新月の構造”に近いのかもしれない。
何かが欠けているとき、
人はそれを補おうとする。
だが本当は、欠けていることそのものが、
内側の感受性を呼び起こしているのではないか。
「欠ける」という時間は我々の意識していないところで
重要な役割を担っている。
満ちていない時間。
見えていない時間。
そこにある「輪郭」を感じとる。
今日の夜は、
そんな時間をとってもいいかもしれない。
秋山 純士の写メ日記
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『新月の構造』秋山 純士