6月の空気は、
もうすっかり夏の顔をしている。
肌にまとわりつく湿気。止まらない汗。
僕らは暑さを避けるために、
冷房をつけたり、水を飲んだり、着るものを選んだり、
あの手この手で「クールダウン」をしようとする。
けれど──。
感情の“熱さ”に対しては、どうだろう。
腹が立つこと、泣きたいこと、
胸を焦がすような出来事。
そんな心の「熱」に、
僕たちは意外なほど無頓着で、
無意識に放置してしまう。
運動の前には準備運動をするのに、
その後のクールダウンは忘れがちになるように。
昂る気持ちのまま走り続けたら、
いつか倒れてしまう。
知らぬ間に、
心のどこかが“熱中症”になっていることがある。
だからこそ。
ときどき必要なのは、
冷たい水ではなく、やさしい体温。
ひとりで頑張るのではなく、
誰かに“ゆだねる”時間。
何かを得るより、
何も求めずに「温度を戻す」こと。
何者かになろうとするより、
「何者でもなくていい」と思えるひととき。
そんな時間はきっと、
自分の人生を生きるための、
静かで強い土台になるのかもしれない。
秋山 純士の写メ日記
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『熱の、あとさき』秋山 純士