“バズる”という言葉がある。
SNSの時代になってから、急速に広まった概念だ。
何かが一気に注目を集め、
数多くの人の目に触れること。
昭和生まれの僕からすると、
どこか馴染みのない響きだというのが本音だ。
「ミリオンセラー」や「ベストセラー」の方が、
実はしっくりくる。
あれは、モノが“売れる”ことで評価された時代だった。
だが、“バズる”は違う。
バズったからといって、
それが「買われた」わけではない。
あるいは、「愛された」わけでもない。
誰が、なぜそれを見たのか。
その奥にある想いや熱量を、誰も測ることはできない。
ただ、数字だけが残る。
この業界にも、“バズる”現象はあるのかもしれない。
SNSで注目されて、予約が殺到する──
そんな可能性もゼロではない。
でも、僕は思う。
この仕事は、バズって終わるものじゃない。
なぜなら、本当に大切なのは、
注目された“その先”にあるからだ。
注目されるのは、あくまで過程。
その先で「誰か」と出会う。
予約という行動を介して、人と人が会う。
バズった投稿がきっかけになったとしても、
最終的には“ふたり”の空間にしか、答えはない。
“多くの人に届ける”ことも、大切。
でも、日記を読んでくれた“たった一人”の、
心の奥底に届いているか──
僕は、そんな気持ちを
いつも忘れずにいたいと思っている。
注目が先行される世の中。
けれど、注目の先に中身や実体がなければ、
あとに残るのは、空虚さと悲しさだけだ。
僕が理想とする“バズる”とは、何なのか。
それは、出会う“誰か”に、
たしかな想いを届けるということかもしれない。
難解なパズルを解くように──
いつか“バズる”の謎が解けると、きっとおもしろい。
秋山 純士の写メ日記
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『バズるを解く』秋山 純士