何年か前に
デザインが気に入って買った黒いパーカー
着れば着るほど
徐々にその色味は褪せていく
そしてその退色とともに
その服への愛着も徐々に薄れていく
だが着れば着るほど
独特の風合いを醸し出し
愛着が高まっていく服も存在する
われわれの記憶も
日を追うごとに色褪せていく
楽しかった記憶も
悲しかった記憶も
徐々にその鮮明さを失い
新たな記憶に日々上書きされる
だが色褪せてもなくならないのが記憶
そしてその記憶は
場合によっては色付けされて
はるか昔の記憶に
思いもしなかった愛着を
覚える瞬間がある
歳を重ねるごとに
記憶という本のページ数は増えていく
その本を読み返した時に
思わず赤線を引いてしまいたくなるページ
過去と現在がつながった瞬間だ
記憶に愛着を覚えるとは
単純に過去を懐かしむことではなく
過去の記憶から未来へのヒントを得ること
過去の記憶から自分の可能性を導き出すこと
膨大なページの中から
抽出された過去の1ページは
われわれがこれから刻むであろう新たな記憶に
彩りを与えてくれる
絵の具のようなものかもしれない
将来をどの色で描きたいのか
その絵の具の色は
僕らの記憶の中に無数にあるのだと思う
秋山 純士の写メ日記
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色を描く秋山 純士