FIRST CLASS

東京/出張ホスト/東京23区から全国出張可能

国見 孝太郎の写メ日記

国見 孝太郎

国見 孝太郎  (36)

プロフィールを表示

  • 【時もかさねて】 第四話
    国見 孝太郎
    【時もかさねて】 第四話

    【時もかさねて】
    第四話
    次へ


    数日ぶりに開いた画面に
    新しい投稿が載っていた

    6月の予定について
    予定というわりには未定の
    "二年目も"いつも通りという内容だった

    彼らしいとも言えるし
    少し意外でもある


    要するに
    一年が経っただけなのだろう

    ストレートに表現しないのが彼
    微笑みの奥に少しの不思議が見える
    そこが彼の魅力なんだろう


    ひっそりとした世界
    一周年を祝う気なんてない
    だから「一区切り」と表現したんだと思う
    そんな彼の姿勢を勝手にくみ取った

    けれど
    そこまでなら
    正直どうでもよかった

    私が目を止めたのは
    その投稿のタイトルだった


    「時もかさねて」


    時だけをかさねるだけではない
    時もかさねるのだ

    そして
    かさねるということは
    ひとつでは成立しない言葉


    けれどその曖昧さが
    彼らしくもあって
    不思議と胸の奥に残った

    私はまた
    予約ページを開いていた



    ——そして時が経つのはあっという間だ



    エレベーターの中で
    ひとつ深呼吸をしてから
    扉が開くのを待った

    あの日と同じ香りが
    鼻先をかすめた瞬間
    胸の奥がじんわりと熱くなる


    バスタオルを渡され
    無言の合図で導かれる
    その軽さが妙に懐かしかった


    枕に顔をうずめ
    目を閉じると
    時間がゆっくりと流れていく

    彼と私の肌が"かさなる"

    彼の手は変わらず正確で
    まるで感情を持たないようにすら見える

    けれど
    その無機質さの中に
    時おり何かが混ざる気がした


    間を置いて
    一瞬だけこちらの反応を探るような
    そんな動きがあった気がする

    たぶん気のせいだ
    そう言い聞かせたけれど
    内心ではそれすらも嬉しかった



    ——そして時が経つのはあっという間だ



    以前なら
    言葉を交わそうとしていたはずの場面で
    私は何も言わなかった

    彼も何も聞こうとしなかった

    なのに
    心が"重なる"かのように
    "想い"が通じるような気がした


    施術が終わり
    彼が軽くこちらを見た気がした
    何か言おうとしたのかもしれない

    でも結局
    言葉にはならず
    そのまま私は着替えに向かった

    部屋の外に出たとき
    空気が少し軽くなっているのを感じた


    受付をあとにし
    彼にまた別れを告げる

    そのまま彼は
    いつもの笑顔で
    わずかに口元を動かした

    ありがとう、と
    言ったような気がした

    あるいは
    またね、と
    伝えようとしたのかもしれない

    どちらでもよかった
    私はただ
    軽くうなずいた

    スマホを取り出し
    次の予約を確認する

    来週の同じ時間が
    空いていた

    もう理由がなくても
    ここに来ていい気がした

    気持ちを隠すために
    遠ざかる必要なんてなかった

    通い始めた頃の私とは
    少しだけ違う自分が
    今ここにいる気がする



    おわり
    〜続きはお問い合わせの先に〜