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国見 孝太郎の写メ日記

国見 孝太郎

国見 孝太郎  (36)

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  • 【時もかさねて】 第二話
    国見 孝太郎
    【時もかさねて】 第二話

    【時もかさねて】
    第二話
    一区切り


    予約ボタンを押したあの日から
    何度も画面を見返していた

    本当に行くのか
    本当に彼に会うのか
    自分の中で確信と疑念が交互に揺れていた

    あの投稿の意味は何だったのか
    「一区切り」という言葉が
    どうしても頭から離れなかった

    辞めるのか
    遠くへ行くのか
    それともただの言い回しなのか


    彼のSNSは相変わらずだった
    緑につつまれたいつもの写真
    心をはぐらかすような無機質の画像

    文の切れ端に
    何かを見出そうとする自分がいる


    過去の投稿を振り返っては
    解釈しきれない投稿を
    なぜか保存してしまっていた

    好きじゃないはずなのに
    気になって仕方がない

    それを気になる程度と呼ぶには
    重過ぎる感情になっている

    会っていた頃の記憶が
    浮かんでは消えていく

    施術の帰り道
    軽く交わしたあいさつ
    鏡越しに目が合った瞬間

    誰にでもあるような時間が
    私には特別だったのだと
    今になって気づいた



    ——約束の日時はすぐにやってきた



    駅を降りると
    日差しをかいくぐって
    時おり冷たい風が頬を過ぎ去る
    空は少し霞んでいて
    記憶の中のあの空気と重なっていた

    街の雑踏
    すこしすさんだ臭い
    華やかに感じる幻想だけの世界

    すべてが久しぶりなのに
    まるで昨日の続きのようだった

    顔が見えない受付は懐かしく
    しかし緊張は膨らんでいく

    会計が終わるまで
    安いアクリルに反射する自分を見つめる
    心だけでなく表情にも緊張が見えた

    どんな顔をして
    彼と向き合えばいいのか
    正解がわからなかった

    チャイムが鳴り
    ゆっくりと扉を開ける
    そこにいたのは——



    (第三話につづく)
    ※次回、6/2配信予定