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国見 孝太郎の写メ日記

国見 孝太郎

国見 孝太郎  (36)

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  • 【時もかさねて】第一話
    国見 孝太郎
    【時もかさねて】第一話

    【時もかさねて】
    第一話
    おもい


    いつの間にか
    行かなくなっていた

    毎月決まっていた時間
    毎回同じ空気
    同じ香りが辺りを漂う

    理由を聞かれれば
    忙しくなって、と笑っていた
    でも本当は違った


    あの人のことが
    気になってしまったから


    施術を担当してくれていた彼は
    柔らかい言葉で
    どこか掴みづらくて
    でも不思議と
    その空気に惹かれていた

    好きかどうかなんて
    そんな簡単な話じゃない
    そう言い訳をしながら
    気持ちをごまかしていた


    彼は何気ないことしか言わない
    それが心地よかったはずなのに
    いつの間にか言葉の裏を探すようになっていた


    私だけに向けられたものなのか
    誰にでもそうなのか
    そんなことを気にしてしまう自分がいた

    そこから先は早かった
    気持ちが顔に出るのが怖くなり
    通うこと自体をやめた


    見透かされそうで恥ずかしかった
    自分が誰よりも
    その気持ちを認めたくなかった

    笑って流せばよかっただけ
    きれいになるための時間だったのに
    こんな想いなんて持ち込むものじゃなかった


    けれどSNSだけは
    時々覗いていた

    月に数回
    誰に向けたでもない投稿が
    ふと目に入ってくる

    何気ない喫茶店のことや
    ありふれない音楽の話
    好きでもなさそうな猫の話

    添えられた言葉は
    意味があるようで
    何も言っていないようでもある

    その曖昧さが
    やけに彼らしくて
    どうしようもなく
    目に残った

    久しぶりに見た投稿には
    こう書かれていた


    「一区切り」


    その一文を読んだ瞬間
    心がざわついた

    辞めるのかもしれない
    どこかへ行くのかもしれない
    もう二度と会えなくなるかもしれない

    そう思ったときには
    予約ページを開いていた

    想いがどうとか関係ない
    理由なんて後付けでいい

    私はただ
    行きたくなっただけ
    それだけなんだ



    (第二話につづく)
    ※次回、5/30配信予定