生活に欠かせない電車ですが、皆さんは電車の中でどのように過ごされていますか?圧倒的にスマホを見ている人が多いかなと思います。SNSをチェックする、Youtubeでお笑い動画を見る、Netflixで好きな映画を見る、本を読む等など。かつ私は電車の中で好きな音楽をずっと聞いています。でも、「電車で過ごす時間は好きか」と言われたら「うーん、あまり」って答えちゃいます。旅行で利用する新幹線やローカル電車の窓から絶景を眺めて過ごす時間は好きだけど、普段生活していると通勤電車をどうしても思い浮かべちゃいます。
田舎から上京してきた私なので都内の満員電車は苦しさとストレスを余計に感じてしまうのですが、車内の全員が黙ってスマホをいじっている空間はなんとなく殺伐としちゃいますよね。そんな通勤電車の中で最近心温まる出来事に遭遇しました。
電車の中で母親と1歳くらいの子供が席に座っていたのですが、最初は窓から外の景色を見たりして楽しんでいた子供も長時間の電車移動に疲れたのでしょう。途中から退屈になって「ねぇ早く帰りたいよ!」と大声で泣き初めてしまったんです。母親が懸命に子供を慰めている姿に車内にいるすべての人が気づいているものの、ピリピリとした空気が漂う電車の中は声をかけにくい雰囲気もあって、シーンと静まり返った車内では子どもの泣き声だけが響き渡っていました。
そんな折、母親の隣に座られていた年配のご老人が子供に優しく話しかけ、カバンからスマホを取り出すと小さい子供が楽しめるようなアニメ動画を写して子供を慰め始めました。おそらくその光景は10分程度続いたでしょうか。ずっと泣き止まなかった子供も最後はすっかり泣き止んで、表情を緩めながら楽しそうに動画に夢中になっていました。子供をあやしていた母親も安堵してご老人に感謝の言葉を伝えたあと電車を降りられました。
私はこの光景を見てご老人がスマホを使って子供をあやそうと思い付いた機転とそれを実行された勇気に感激すると同時に、心の中で拍手を送りました。他の乗客全員も同じく心温まる思いだったと思います。それと同時に自分の不甲斐なさを痛感せざるを得ませんでした。混雑した通勤電車という殺伐とした雰囲気の中で、誰にも助けを求めることが出来ない孤独さと一人で戦わなければいけない母親の辛い心境は容易に想像できます。誰かが勇気を出して、一言声をかけてあげるだけで心は救われる。無関心は一番残酷なことだと気付かされました。
その子供が数年後に大人になったとき、このご老人の優しさと親切を覚えていることはおそらくないでしょうが、記憶の片隅に少しでも残っていてほしいと願わざるを得ませんでした。私まで勇気をもらえたような気がして電車を降りて改札を出た際、遠くの空を見つめてスッと心が晴れやかになりました。
悠真