ふと考えることがある。
キスって、唇が触れた瞬間のことを言うんだろうか。
たとえば、顔が近づいて、相手の吐息を感じたとき。
視線が合って、でもすぐには逸らせなかったとき。
その時点で、もうキスは始まってる気がする。
唇が触れ合うよりも前に、心のどこかがそっと開くような感覚。
“これから触れる”という緊張と、“触れてほしい”という期待が、同時に混ざってくる。
そして、触れたあとよりも、触れる“前”のほうが、呼吸は乱れたりする。
キスって、単なる行為じゃなくて、その人に自分を預けてもいいと思えた瞬間なんじゃないかと。
唇を合わせるのがうまいかどうかより、“キスしてもいい空気”をつくれるかどうか。
そこがいちばん大事なところな気がする。
「キスは、触れたときじゃなく、触れようと思った瞬間から始まってる」
そう思うと、あの一秒前の沈黙が、どれだけエロかったかがわかってくる。