エロさって、肌が触れ合った瞬間よりも、触れる“直前”にいちばん濃く滲む。
手を伸ばして、でもまだ相手の肌に触れていない。
唇が近づいて、でもまだ落ちない。
その、わずか数秒の“間”に、快感の種が仕込まれてる。
性感の技術は、手先の器用さじゃなくて、“間の取り方”に出ると思ってる。
沈黙を怖がらないこと。
沈黙のなかにある期待や緊張を、わざと崩さないこと。
それができるかどうかで、空気がまるで変わる。
人の身体は、緊張と緩和でできてる。
何も起きない時間があるからこそ、次の刺激が深く刺さる。
たとえば、照明の下で何もせずに見つめる時間。
首筋に吐息だけを落とす時間。
服の上から、あえて手を止める時間。
触れてないのに、身体が勝手に反応しはじめる。
性は、タイミングの芸術だと思う。
どこをどう触るかじゃなく、「いつ触れるか」がいちばん問われる。
だから俺は、触れる前ほど静かになる。
「沈黙は、最高の前戯になる」
「触れる前に、どれだけ相手を震わせられるか」
それが、俺の性感のひとつの軸になっている。
性感って、身体を動かす仕事じゃない。
空気を動かす仕事だと思ってる。
そして空気は、沈黙のなかでこそ育つ。