先日、劇団 B機関 が主催する舞台『星の王子さま』を観劇してきました。
寺山修司の戯曲を下敷きにした舞台で、大きなテーマとして「虚構と現実、どちらを生きるのか」が根底に流れている物語でした。
タイトルからサン=テグジュペリの作品を連想する人が多いかもしれません。もちろん作中で言及されるシーンはあるけど、読んでなくても全然問題はないし、寺山修司の予備知識がなくても充分に楽しめると思える内容でした。
個人的に最高だなと思った点が2つあって、先ず1つ目がですね、全編を通して言葉が詩的なんですよ。
見えないものを見ようとするとか、何を無くしたのとか、言葉尻は多少違うと思うけど、内容にしても言葉の選び方としても、現実世界のクソみたいなリアリズムからは遠く離れた別の世界線に連れて行ってくれる強度が流れていて素晴らしかったです。
次に最高だと思ったのが、終盤に挿入される強烈なメタ視点です。ネタバレになるので詳細は省きますけど、凄いんですよ。虚構の世界を侵食して内側から破壊するような演出や言葉の数々が飛びかうシーンがあるんですね。
かと言ってそのメタ視点で作品そのものが壊れるかと言ったらそんな事はなくて、根底のテーマである「虚構と現実」がより一層浮き彫りになるんですよ。
何と言うか、「舞台」という形式を逆手にとった上で残酷なまでに虚構と現実を対比させる事に成功してる感じがしました。
この文章を書いていても言葉で説明するのがあまりに陳腐に思えてきたのでこの辺にしますが、兎にも角にも素晴らしい舞台だったんですよ。
俺はどちらかといえば虚構寄りの人間なのですが、現実世界についても考えるきっかけを与えてくれる物語でもありました。
でも、「考える」とか言ったところでそれは言語で考える訳で、俺は死ぬまで象徴的な事物から逃れられないんだなぁとか思ったりしてます。自分と世界との間にある象徴を取り払いたいけども、そんな状態を想定する事すら出来ない現実に辟易しながらも、のらりくらりと生きていこうと思います。
舞台の感想から少しズレてしまいましたね。
閑話休題。
二度目になりますが、とても良い舞台でした。「B機関」が別の舞台を上演する日が来たら、また見に行こうと思ってます。
かしこ
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