「静香(仮名)、37歳。止まっていた時計が動き出した日」
私は静香、37歳。
東京で働く、ごく普通の会社員。結婚歴なし、恋人なし。
毎日をこなすように過ごしていた。淡々と仕事をして、誰とも深く関わらず、ただ年齢を重ねていく日々。
恋愛に奥手というわけではなかった。でもいつの間にか、「女としての自分」をしまい込む癖がついていた。
職場でも、飲み会でも、恋愛や性の話題になると、うまく笑ってやり過ごす。
誰にも嫌われないように、角を立てないように。
気づけば、自分の欲望や本音を、誰にも見せられなくなっていた。
ある夜、ふとした検索から
その日、珍しく早く帰宅した私は、ぼんやりスマホをいじっていた。
「女性 性欲 満たされない」と、なぜか検索していた。
そこで偶然、「女性用風俗」という言葉に出会った。
最初は正直、眉をひそめた。
「そんな世界、自分には関係ない」
「寂しい女に見えるのでは」
けれど、不思議とページを閉じることができなかった。
レビューには、「癒された」「自分を取り戻せた」「泣いてしまった」など、想像とは違う言葉が並んでいた。
「もしかして、私も…?」
その夜、私は初めて「自分のために、何かをしてみたい」と思った。
予約の日、震える指先
セラピストのプロフィールを眺めながら、やっとの思いで一人の人を選んだ。
優しそうな目元と、控えめな言葉遣い。
きっと、この人なら私を拒絶しない――そんな直感だけを頼りに。
当日、手は震えていた。何度もやめようかと思った。
だけど、ドアの前で深呼吸をして、自分に言い聞かせた。
「今日くらい、自分を甘やかしてもいいじゃないか」
涙がこぼれた、知らない人の胸の中で
セラピストは、最初から私の心の壁に無理に入ってこようとはしなかった。
ただ、静かに、私の存在を受け止めるように話を聞いてくれた。
触れられる前から、私はもう泣きそうだった。
「緊張しますよね。大丈夫、無理はしなくていいです」
その一言に、なぜだか、涙が止まらなかった。
抱かれたとき、私は性欲を満たすというよりも、「人と触れ合う」という感覚を思い出した。
誰かに受け入れられるという温かさを、ずっと忘れていたのだと思う。
その日を境に、私は変わった
たった数時間の体験だった。でも、それが私の人生を変えた。
翌日、ふと鏡を見たとき、何かが違って見えた。
頬の血色、まつげの上がり方、笑う準備をしている口元。
私は、自分を嫌っていなかった。
ただ、長いあいだ「自分を感じること」をあきらめていただけだったのだ。
踏み出した、新しい人生
それから私は、少しずつ行動を変えていった。
メイクを変えた。
着る服を変えた。
そして、他人に心を開く勇気を持つようになった。
風俗を利用したことを、誰かに話すつもりはない。
でも、あの日の私は確かに、自分の人生を取り戻す一歩を踏み出した。
そして今、私は恋をしている。
相手は、セラピストではない。
ただ、自分の心と身体に素直になれたおかげで、誰かを信じてみようと思えた自分がいる。
最後に
私にとって、風俗は「性を買う」ことではなかった。
「自分を愛する」ための入り口だった。
もし、今、誰にも言えない孤独を抱えている誰かがいたなら、伝えたい。
あなたは、感じていい。求めていい。満たされていい。
あの日の私がそうであったように。
ケインの写メ日記
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風俗を利用して新しい人生を踏み出した女性の物語ケイン