昔、家の近所に
空手の道場があり、
僕は週6で通っていました。
格闘技を始めた理由は
強くなりたいでも
心身を鍛えたいでもなく、
「綺麗なハイキックが
打てるようになりたい」
という、格闘ゲーム愛を
妙にこじらせた
ゆがんだオタク愛を
起因とするものでした。
ハイキックが
打てるようになるには
いくつかハードルがあり、
まずは足が相手の頭まで
上がらなければなりません。
これは延々と
右足を高く上げるという行為を
何カ月も繰り返して
クリアしました。
そして鍛練の結果、
晴れて足が上がる様になっていき、
やった、ハイキック完成だ!
…とはならず、
次の問題が発生します。
いざ実際にやってみると、
上がった足に
力が乗らないのです。
ただただ、
右足が高く上がるだけ。
ポフ、ポフ…と、
サンドバッグを
やさしく撫でる僕の足。
そこから何ヶ月かまた、
高く上がった足で
サンドバッグを延々と
蹴り続ける事で、
徐々に足にも力が乗るように
なっていきます。
そうすることで、
段々と足に力を込めて
ハイキックが
打てるようになりました。
「スパーン!」
…と、快音響く
僕の足。
これで最強の
ハイキックの誕生だ!
…と、ここで
なるはずでしたが
現実は厳しく、
いざ実戦でやってみると
また予想外の問題が
発生します。
さて、このハイキックが
実際に打てるようになるまで
わからなかった
予想外のトラブルとは
一体なんでしょうか。
…
…
正解は、
「蹴ったこっちの足が超痛い」
です。
考えてみると
ごく当たり前の事で、
足の甲で頭なんて
固い物を蹴れば
めちゃくちゃ痛いに
決まっています。
これは別にハイに限らず
ミドルを上手く
ヒザで受けられた日には
足が痺れて、歩くのも
ままならなくなる程に
めちゃくちゃ痛いです。
攻撃をしたのは
こちらのはずなのに
突然足に激痛が走り、
急にひょこひょこと
後ろにあるきつつ
「ちょっと…ごめん…」
みたいな、
相手も
「お、おう…」
みたいな、
そんな気まずいシーンが
発生することも
たびたびありました。
プロの格闘技で
こうした場面が見られないのは
皆さましっかりと
鍛錬を積まれているから
なんですね。
素人の現実は
こんなものです。
では今度は
どうするのかというと
対策は非常に単純で、
固い物を蹴って
体を強くしていくことが
一般的のようです。
砂袋を蹴ったり
ビール瓶や鉄アレイで
足の甲を叩いたり。
ちなみに「砂袋」と
名前はついていますが、
カチカチのゴチゴチの
固さのもので、
コンクリの
塊のようなそれを
ゴンゴンとひたすらに蹴ります。
(強さは加減します)
先輩はついに
僕がそのステージまで
上がってきたことが
嬉しかったらしく、
「拳ならここがおすすめですよ^^」
と、ニコニコしながら
ゴツゴツと玄関の固いタイルを
殴っていました。
他にも僕が今まで
知らなかっただけで、
「腕を鍛えるなら部屋の角の鉄骨」
…など、
部屋中に
体をゴンゴンする
おすすめスポットが
存在していました。
まさか僕も
リアル刃牙みたいな
行為を自分がやるとは思いも
していなかったです。
結局それからほどなくして
別のきっかけが重なり
ネトゲにハマったために
僕の競技人生は
終わってしまうのですが、
もしかしたら体中が
カチコチになった格闘家の
世界線もあったかもしれません。
なお、Twitterにて
本日公開した動画は、
実際に僕が道場のすみっこの
鉄骨入りの壁に
腕をガンガン打ち付ける
訓練をしていた時のものです。
音である程度伝わるかと
思いますが、
そこそこ強くやっているので
はっきりいって
めちゃくちゃ痛いし
「俺は何やってるんだろう感」
が、満載でした。
でもはやく強く
なりたかったんですよね。
今見ると我ながらよく
やっていたなあと思います…
洋介の写メ日記
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空手家をこころざしたお話 洋介洋介