【酒が足りねえ】- 相馬みさき(amen)- 性感マッサージ

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相馬みさき

相馬みさき  (34)

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  • 酒が足りねえ
    相馬みさき
    酒が足りねえ

    人は未来に希望がなければ生きていけないらしい
    絶望のみが立ちはだかる未来を生き抜けるほど
    人は強くはないという
    ここで言う希望とは
    将来成したい夢があるとか
    守りたい最愛の者がいるとか
    そんな大きなものでなくても良い
    どこか行きたい場所があったり
    また会いたい人がいたり
    好きなアートや景色があったり
    僅かでも恩賞や生き甲斐があったり
    そんな小さな希望でも良くて
    そんなものたちを日々紡ぎ合わせて
    人は生きていくのだという

    なんて面倒臭いのだろう
    なんてやかましいのだろう
    私にはその絵空事が誇大広告にしか聞こえない
    自分の命においては一個の消耗品としか思えない
    手間暇かける価値がわからない
    諸行無常の意図で事足りる
    場所も人もいつまでもそこにない
    己も含めいずれは変化する
    生きた甲斐など日銭と同じ
    文化でさえ所詮は利益率
    いつまでもあの日のままじゃない
    いつ無くなるかさえ確かめられない
    そんなものを紡ぎ合わせて
    それだけが生きる糧だなんて
    あまりに心許無くてやってられない
    寄り添える相手は思い出だけ
    確かなものはその瞬間だけ
    ましてや信頼は裏切りの前座
    ふとした拍子に傷つけ合って
    希望のつもりが急転直下
    そうして少しずつ摩耗して行く
    もうそんなのはうんざりだろう

    破滅へ進む道の傍らで
    気まぐれに煌めく塵芥
    そこから希望を見つけろってさ
    失くしても亡くしてもまた探せってさ
    なんて面倒臭いのだろう
    暗闇の中の小さな水滴を
    掴んでは溢してを繰り返して
    そうやってやっと死まで這いずって
    それが一体なんなんだ
    やってらんないしもう眠いです
    そう言いつつも捨て切れないのが
    人生に潜む厄介な情緒で
    愛したいとか愛されたいとか
    孤独は同じ議論を繰り返す
    進歩のねえ人類でありんす

    それらを一撃で打開する
    救世主が現れました
    warning warning
    呑めや歌えや踊れや騒げ
    酒だけ飲んで今日を終わらせて
    何もない下り坂を転げ落ちて
    さっさとトンズラこいてしまえる
    アルコールとは神の異称でした
    生きることにおいて怠惰で
    未来にも希望にも物怖じて
    天岩戸に閉じ籠もる私を
    誘い出すのは腐敗の酒盛り
    傷つけられることもなく
    傷つけてしまうこともない
    私の寿命を啜り取りながら
    どんな言い訳も頷いてくれる
    孤独な夜にはいつも側にいて
    酩酊の快楽に沈めてくれる
    こいつはなんていい女だろう
    何かを探したり期待したり
    性懲りも無く繰り返す様は
    とても滑稽でとても勇ましい
    諦めた振りをして笑う私は
    そんな無様にさえ嫉妬して
    希望を求める気概もないのに
    絶望からも逃げ仰せたがる
    許せサスケ
    さよならエレジー
    一緒に一日を捨てようアガペー
    なんとなく笑って何もなく死ぬので
    今後も無害だけ心掛けます
    百年の孤独と書いたボトルを
    希望と呼んで今日もおやすみ




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