恋愛時計
最終話 エピローグ
「ママー早くしてよー!間に合わないよー」
翌年の年末、紗弥は祥子を急かしていた。渋谷のホールで行われる「KANADE」のワンマンライブに行くためだ。
春先にアルバムをKANADE名義でリリースした奏は、同時期に始まったドラマの主題歌に恋愛時計が使用され、YouTubeでの再生回数が3,000万回を越えていた。
年頃の紗弥にとって恋愛時計は外せない流行りの曲だっただけでなくKANADEのルックスも大のお気に入りで、すぐに推しになった。
今も出掛ける準備中、KANADEのCDを流して気分をアゲていたのだ。
「はいはい、お待たせー」
「もう、ライブは最初が肝心なんだからね!サポートギターがSHINさんだからもっとテンション上がるのかと思ったのにー」
「パパも行ければ良かったのにね、楽屋とか入れたかもね笑」
「ホントよー!いつか絶対パパもつれていくんだから!!」
「ふふふ。さ、行こうか」
「うん、ママも20年以上振りのライブだもんね、楽しもっ!」
二人はお洒落して出掛けていった。
誰もいないリビング。
テーブルの上にはKANADEのCDが置かれている。
参加ミュージシャンのクレジット欄にはこう記されていた。
Piano SHOKO
恋愛時計
了
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この物語は以前ポストした内容が元になっています。
結婚して家庭に入った時
無意識に止めてしまった
恋愛時計
再び動かしたのが
女風だとするなら
電池を入れ換えた
若いセラピストと
恋愛年齢は同世代
その時だけは
動き続けてる
時計を隠して
臆することなく
恋をしましょう
その時あなたは
自分が思うより
かわいいんです
気付いてますか?
弦之介の写メ日記
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恋愛時計 最終話「エピローグ」弦之介