【恋愛時計 第28話「恋と愛」】- 弦之介(女性用風俗amen)東京/性感マッサージ

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    恋愛時計 第28話「恋と愛」

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    第28話 恋と愛

    奏は年内でセラピストを辞めることを告知していた。これまでの感謝の気持ちで大晦日まで毎日何件もの予約に対応していた。

    12/24の演奏会を除いては。

    この日は奏が数ヶ月前から祥子の誕生日にスケジューリングした演奏会だった。

    ただディズニー旅行のあと二人の関係はどこかギクシャクしていた。お互いを強く思う気持ちとは別に、祥子は家族を思い、奏は祥子や彼女の家族に迷惑をかけてしまう、と思っていた。

    「12/24の演奏会、来て欲しい」

    「まだよくわからないの。多分家族がパーティーしてくれると思うのよ」

    「そうなんだ・・・」

    「あ、でも出番次第では行けるかもしれない」

    「一番目に出演できるように交渉してみるから、出来たらきて欲しい!」

    祥子は悩んだ。奏に会いたい、来年になったらセラピスト涅音ではないギタリスト奏と会える。あの繊細で力強い指、逞しい腕に抱かれてひとつになりたい。そう思うのと同時に、家族を大切にするにはもう会わないこと、今がその決断をするチャンスだと思っていた。

    (奏くんはまだ若い)

    (彼の未来のためにはもう合わない方がいい)

    (でも会いたい。会いたくて涙が出るの)

    (会いたいよ・・・)

    どれだけの涙を流しただろうか、数日後、悩んだ末に祥子は行けないと電話で伝えた。会ってしまうとその後も絶対に会いたくなるとわかっていたから。

    奏は来てくれると思っていた。そしてそれが最後になかもしれないと。だが来ない決断を伝えられた。

    「祥子さん、それが祥子さんの答えなんだね」

    「奏くんの顔を見たらきっと終われない」

    「僕は終わりたくない。でも・・・受け入れるしかないよね」

    奏は祥子の家族に起きた緊急事態の時、二度も一緒にいた。脩平に関しては命に関わる大事故だった。その現実と家族を思う祥子の気持ちを考えたら抵抗など出来なかった。

    「奏くん、短い時間だったけど、私、とても幸せだった。こんなにもドキドキしたり、不安になったり、嫉妬したり、デートの時に何を着ていくか迷うほどの純粋な好きって気持ちにはもう出会えないと思っていたの。でもそれをあなたが見せてくれた。本当は離れたくない、できることなら今すぐ抱き締めて連れていって欲しい。でも私には大切な家族がいて、私は、私は家族を選んだの」

    「わかってる。祥子さん、苦しんだんだよね」

    「うん・・・これが夢だったら良かったのに」

    「僕も張り裂けそうなぐらい苦しい。でも祥子さんの家族のためにもそれぞれの道を歩いていこう」

    「この夢が続けばいいのに!」
    我慢していた涙が祥子の目からこぼれ落ちた。

    「祥子さん、ありがとう。あのセッションは一生忘れません」

    「私も忘れない・・・」

    しばらく無言が続いた後、奏が告げた。

    「さようなら」

    少し間を置いて祥子も告げた。

    「さようなら」


    二人の関係は終わった。いや、祥子が終わらせた。



    誕生日が近づくにつれて祥子は奏のことばかり考えていた。

    (その日、私のために演奏会をやると決めてくれた)

    (私に書いた恋愛時計を演奏するって言ってたのに・・・)

    (奏にわからないようにこっそり見に行くなら・・・)


    本当に最後にするつもりだった。12月24日、祥子は知り合いのクリスマス演奏を見て20時半頃帰ると家族に伝えた。

    会場の恵比寿OUTSIDE。

    祥子は開演ギリギリの18時半に会場に入ってカウンター席の隅の方で待機した。

    奏がステージに登場すると、その佇まい、ルックス、体型、色気には改めて誰も敵わないと思った。ただ、どこかショーケースの中の人形のような感覚が生まれていた。


    演奏が始まるとエクスタシーのような感覚は影を潜め、懐かしさのような、優しさのようなものに包まれた。

    中盤のMCで奏が話す。

    「次の曲は僕の大切な女性に向けて思いを紡いでいった曲です。多分その人とはもう会えません。どこかで耳にしてくれるように願いながら歌います」



    「恋愛時計」

    あの日僕と出会うまで
    きっとあなたは誰かのために
    一生懸命生きすぎて
    自分の傷にも気付かなかった

    人と比べる訳じゃないけど
    頑張りすぎてたあなたが痛くて
    僕は抱き締めたんだ
    いつでもいいから逃げておいでって

    Ah 神様なんかじゃないから
    Ah 僕たちは不完全な生き物

    揺れる心が答えなんだよ
    そうそれがあなたなんだよ

    恋愛時計が動き始めたら
    思うままに進めばいいんだよ
    恋愛時計が止まるまで
    あなたのままでいればいい




    祥子は最後まで聴くことが出来ずにワンコーラスが終わるとライブハウスを後にした。このまま最後まで聴いてしまうと、会いたい気持ちに負けそうだから。

    泣かないと決めていたのに勝手に涙が溢れてきて、街の灯りがボヤけて見える。

    (早く涙を止めないと家に帰れないのに。。。)

    気持ちをクールダウンさせるために1駅前で降りて歩いて帰った。私のために書いたと言っていた恋愛時計のギターの音と初めて聴く奏の歌が頭から離れない。

    ここで終わらせないと、もう終わらせることが出来なくなるとお互いにわかっている。だから私だけ弱くなっちゃだめ、家族の待つ家に戻らないと、そう自分に言い聞かせながら歩いた。

    家の前まで来ると、祥子は大きく深呼吸した。ここまで抱えてきた感情を全て吐き出すように。次の一歩では消えているように。

    ドアを開けて中に入ると電気が消えている。

    不思議に思いながらリビングに入ると。

    「パァーン!!パァーン!!」

    「ママー!お誕生日おめでとう!!」「祥子ー!いつもありがとう!!」

    サプライズだった。今日はクリスマスイブであり、祥子の誕生日であり、和夫との結婚記念日なのだ。

    祥子は顔を覆って膝から崩れ落ちてしまった。

    嗚咽が止まらない。こんな姿はおかしいのに、変なのに、止まらない。

    「祥子、大丈夫?」「ママー大丈夫、ビックリしちゃた?ごめんね」

    祥子は顔を覆ったまま頭を横に振ることしか出来なかった。

    この涙がいつ止まるのかわからなかった。たとえ止まっても心の中で私は泣き続けるのだろう。

    誓った、もうこれから二度と家族に嘘はつかないと誓った。

    そして奏とのことは二人だけの秘密として死ぬまで心の奥底にしまっておくと誓った。

    そう決意することで少し落ち着きを取り戻した祥子は、ゆっくり立ち上がりながら言った。

    「ごめんね、ビックリしちゃた。嬉しかったよ、ありがとう」

    「ママがこんなにビックリするとは思わなかった、ごめんね。さ、みんなでお祝いしよ!」

    「腹へったー!」

    「あんたはいつもそればっかりね!」

    そう言って紗弥は脩平を肘で突っついた。

    リビングに響く笑い声。幸せな家族。祥子はここが自分の居場所、居るべき場所だと改めて感じていた。



    ===========

    この物語は以前ポストした内容が元になっています。



    結婚して家庭に入った時

    無意識に止めてしまった



    恋愛時計



    再び動かしたのが

    女風だとするなら



    電池を入れ換えた

    若いセラピストと

    恋愛年齢は同世代



    その時だけは

    動き続けてる

    時計を隠して



    臆することなく

    恋をしましょう



    その時あなたは

    自分が思うより

    かわいいんです



    気付いてますか?




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