恋愛時計
第26話 ディズニー旅行
祥子はディズニーが大好きだった。子供たちが生まれる前は和夫とよく一緒に出掛けては二人で子供のように楽しんでいた。
ただ子供たちが生まれてからは、主役は子供たちで自分たちは子供たちが望むものを一緒に楽しむだけだった。もちろん、子供たちの笑顔を見るのが幸せだったから何の疑問も抱くことはなかった。
ただ奏と出会った今、自分のために楽しみたかった。奏と一緒に楽しみたかった。
「奏くん、12月のディズニーって行ったことある?」
「ううん、行ったことないよ。というよりディズニーにはほとんど行ったことがないんだよね」
「そうなの?あのね、12月3日にお泊まりしたい」
「え?泊まり?家は大丈夫?」
「うん、12月のどこかで友達と泊まりでディズニーに行くことになってるの」
「もちろん、嬉しい!」
「じゃ、予約入れておくね」
「うん、ありがとう。あの、祥子さん」
「何?」
「僕、セラピストを辞めようと思う」
「え?何で?」
「奏として祥子さんと会いたいから」
「ホントなの?」
「目標を達成したし、12月いっぱいで辞めるんだ。もうお店にも伝える。12月に入ったら告知しようと思ってて」
「ホントならとても嬉しいけど、でも・・・」
「でも?」
「私は結婚してるし、奏くんが都合のいい人になってしまうのが申し訳ないのと、お客さんじゃなくなるから会ってくれないかもしれないのが怖いの」
「目標を達成したら辞めようと思ってたからそのタイミングが今なだけで、祥子さんにはこれからもずっと会いたい」
「辞めても私と一緒にいてくれるの?」
「ダメ?」
「まさか!ありがとう、嬉しい」
「だからそのディズニーが涅音として会うのは最後になるんだよ」
「うん、じゃ、セラピスト涅音との最後をしっかりと楽しむね!」
「うん、いっぱい楽しもうね!」
12月3日、二人は初日をディズニーランドで楽しんで翌日はディズニーシーで楽しんでいた。祥子はセラピストとしての奏の最後を、行き届いた優しさの全てを受け入れると共に、少年のような笑顔が嬉しかった。
宿泊先のホテルミラコスタでは、涅音の最後ということもあり最後の一線を越えることはなかった。
セラピストを辞めたら、その時には晴れてひとつになれる、お互いにそう思っていた。
セラピストとお客さんとしての最後の予約だった。
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この物語は以前ポストした内容が元になっています。
結婚して家庭に入った時
無意識に止めてしまった
恋愛時計
再び動かしたのが
女風だとするなら
電池を入れ換えた
若いセラピストと
恋愛年齢は同世代
その時だけは
動き続けてる
時計を隠して
臆することなく
恋をしましょう
その時あなたは
自分が思うより
かわいいんです
気付いてますか?
弦之介の写メ日記
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恋愛時計 第26話「ディズニー旅行」弦之介