恋愛時計
第11話 母親
「紗弥!脩平!起きなさーい!!何度も呼ばせないで!!!」
紗弥19歳、修平17歳、それぞれ大学と高校に通う学生二人を起こすのが日課だ。もちろんその前に起きて二人の弁当を準備して、和夫含めた4人の朝食も準備する。
祥子は二人の子供が生まれてからは子育てとピアノ講師の仕事でバタバタと生きてきたが、忙しい毎日はバタバタとしていることさえ気付かせなかった。
3人が出掛けたらゴミをまとめて掃除。その後に洗濯を済ませたらもうお昼になる。簡単なご飯を食べたらピアノ講師の仕事に出掛けるのだ。
教えているのが実家の一室ということもあり、毎日両親の顔を見られることが祥子にとってホッとすることのひとつだった。
二人の子供が生まれる前は朝から夜まで教えていたが、出産を機に午後から夕方までの数時間にして家庭の時間を作っていた。
この日も17時までピアノを教えて買い物、18時には夕食の準備を始めていた。
修平からLINEが入る。
「今夜友達とカラオケ行くからご飯いらなーい」
紗弥からも
「ママ、ごめん、友達とご飯行くから夕食は大丈夫だよ」
そして和夫も
「今夜急に接待が入っちゃって。なるべく早く帰るようにするけど晩御飯はいらないからね。もしもう作ってたらごめんね」
ふー。
(刻んだ玉ねぎと途中まで切った人参をどうしろと?もうちょっと早く連絡くれれば実家でご飯食べて帰ったのに・・・)
やる気が全面停止した祥子は、SWEET ANGERのライブを見ようとソファーに横になりスマホを手にした。
するとYouTubeのおすすめにアコースティックギターの画像と「EDGESWEET/SWEET ANGER cover」という文字が。
EDGESWEETは深淵という映画のテーマにも使われた彼らの楽曲の中で一番有名な曲だ。
今さらSWEET ANGERの曲をカバーしてる人がいるの?と、ちょっと気になった。
祥子はYouTubeのそのサムネイルをプッシュした。
その時はそれが祥子の運命を大きく変えることになるなど、知る由もなかった。
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この物語は以前ポストした内容が元になっています。
結婚して家庭に入った時
無意識に止めてしまった
恋愛時計
再び動かしたのが
女風だとするなら
電池を入れ換えた
若いセラピストと
恋愛年齢は同世代
その時だけは
動き続けてる
時計を隠して
臆することなく
恋をしましょう
その時あなたは
自分が思うより
かわいいんです
気付いてますか?
弦之介の写メ日記
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恋愛時計 第11話「母親」弦之介