『恋愛時計』
第2話 祥子の日常
東京では遠征費用を稼ぐために有名キャバクラ店で働いた。平均的なルックスの祥子だったが、笑顔が印象的で男を気持ちよくさせる話術のようなものが備わっており店では常にトップ3に入るほどの売れっ子だった。
SWEET ANGERのライブとそのためのキャバクラが今の祥子の人生だった。そのことに疑問を感じることもあったが、今はこれが楽しいと割り切っているようだった。
元々祥子は3歳からピアノの英才教育を受け、中学生の頃に全国コンクールで金賞を獲得したこともあった。ただ高校生だったある日指を骨折する事故に遭い、半年間弾けない間にピアノへの情熱が薄れ、その頃にSWEET ANGERと出会い人生が変わったのだった。
ある日キャバクラの常連客からこんな質問をされた。
「祥子ちゃんは愛嬌があって気が利くからHの時も尽くしそうだね」
ドレスが少しはだけていたせいで胸の谷間が見えるのか、言い終わってから目線をそこに移した。
「やめてくださいよー、私、まだ少女なんですからー」
処女とかけて答えてはいたが本当のことだった。なんとなくそんな雰囲気になったことはあったが、最後のところで祥子の好奇心を性欲変えて火をつける男性がいなかったのだ。
「もったいない。教えてあげるよー」
「雄二さんはお父さんですよー、近親相姦になっちゃいます!」
「ははは、それもそうだな!」
そんな素直さで祥子は可愛がられていた。
その日の帰り道、祥子は考えていた。
(このままずっと処女って訳にはいかないよね、結婚前に経験しておいた方がいいのかな・・・。でも私、結婚するの?誰と?そんな人現れるのかな)
両親は祥子にたくさんの愛情を注いで育ててきた。ピアノもそのひとつで裕福な家庭ではなかったが著名な先生に個人指導をお願いしていた。幼稚園から一貫教育の私立学校に通わせて将来苦労しないようにと考えていたのだ。
そんな親心を知ってか知らずか、ピアノを辞めてロックに目覚め、高校3年の時は出席日数ギリギリで卒業、そのままエスカレーター的に有名大学に進学するという道も自ら断った。母親はとても残念がり、何のためにピアノを習わせて私立に行かせたと思ってるの!と怒ったが父親はそうではなかった。
「まだ未成年だがもう立派な大人だ。お前の考えを尊重する。ただし自由を手に入れたのは嬉しいだろうが、これからは同じ重さの責任もついて来ることを忘れないように」
祥子はこれまで少ししかなかった手綱が物凄く長く、でも太くなったような、そんな愛を父の言葉から感じ取り、いつかはけじめをつけなければと考えていたのだった。
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この物語は以前ポストした内容が元になっています。
結婚して家庭に入った時
無意識に止めてしまった
恋愛時計
再び動かしたのが
女風だとするなら
電池を入れ換えた
若いセラピストと
恋愛年齢は同世代
その時だけは
動き続けてる
時計を隠して
臆することなく
恋をしましょう
その時あなたは
自分が思うより
かわいいんです
気付いてますか?
弦之介の写メ日記
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恋愛時計 第2話 「祥子の日常」弦之介