最上階の4人部屋だけあって、広くて清潔感のある部屋だった。
にも関わらずベッドは部屋の真ん中に一つあるだけで、この部屋の限られた用途を浮き彫りにしている。
照明のスイッチは全て切られ、隅に置かれた優しい色の間接照明だけが、弱々しく部屋を照らしている。
「えっと、お風呂とか、入ります?」
「まぁ、そりゃあ」
永瀬君と私は、ワイシャツ姿で並んでベッドに腰掛けていた。
互いを盗み見ながらも、視線は決して交わらない。
ただ2人の手のひらだけがすぐ近くで互いをにらみ合っていた。
そして正面を見れば、私のことは気にせず始めなさい。と言わんばかりに腕を組んだ課長が、真っ赤なソファーに腰掛け見守っている。
いやー、気まずい。
「じゃ、お先に……」
永瀬君が、なかば逃げ出すかのように素早く風呂場へと立った。
彼の背が見えなくなったところで私は大きなため息をつく。
なんだか今日はため息ばかりだ。
「悪いやつじゃないんだよね、あいつ」
課長が、空いたばかりの私のとなりへゆっくり腰をおろした。
「少し優しすぎるってか」
落ち着いた色の照明が彼の真剣な表情を照らした。陰影の深い横顔は、月9ドラマの刑事役でもいけそうな大人の色気をはらんでいる。
「いやそもそも課長が口はさんで来なくていいんですけど」
視線を逸らし、なんとなく早口になって反抗する。
「そうか」
課長が気だるげにネクタイをゆるめた。
真似たわけではないが、私もブラウスのボタンを少し外した。
さきほどから、晩春の夜にしては妙に蒸し暑い。
首筋を汗がつたっていき、下着の隙間へと消えた。
「ていうかここ、ちゃんと空調ついてます?」
エアコンのリモコンに伸ばそうとした私の手に、ゆっくりと、浅黒い大きな手が重ねられた。
骨ばった課長の手は、しっとりと熱を帯びていた。
「ちょっと、なに、するん……」
困惑しながら顔を上げた、その瞬間に。
私は、唇を塞がれていた。
「〜〜〜〜〜っ!」
きゅう。と上品な音を鳴らしながら、課長の薄い唇が離れていく。
遅れて口の中から、アルコールと加熱式タバコの匂いが逃げていった。
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同僚以上、主従未満 第1話 -4/11-瀬戸口めぐる