僕は今まで絵画を見て
心を動かされるという事はありませんでした
美術展や博物館にいく事も勿論ありました
絵画を見て面白い構図だなとか技法が凝っているな
面白い絵だなと思う事はありましたが
感動と言いますか、心を動かされることは
あまり、いや恐らく一度も無かったのです
創作物全般にそうかというとそうでも無くて
音楽を聴いて涙したこともありますし
小説を読んで感情移入しすぎて
呼吸が苦しくなった事もあります
ただ絵画についてのみ
そういった感動を得る事は無かったのです
その絵を見たのは先月、1月だったと思います
ただ残念な事にどこで見たのかを
あまり思い出せないのです
その絵は壁にかかっていました
室内の壁で屋外の壁ではありません
美術館で展示されるような仰々しい展示ではなく
壁のスペースが空いて殺風景だから
そこに絵でも飾っておくかくらいの扱いで
飾られていました
そこに描かれていたのは海でした
写実的とは言えず
明らかに絵であるとわかるタッチで描かれています
キャンバスを横に3分割する構図で描かれていて
下から砂浜、海、空の順に並んでいます
白と黒の2色の濃淡で描かれていて
それが昼なのか夜なのか想像ができません
ただきっと夜なのだと思います
絵の下部ひろがる砂浜には人影はありませんし
パラソルだったり流木だったりゴミだったり
砂浜にありそうなオブジェは一つもありませんでした
海面は黒で表現されているのですが
全てを飲み込むような怖さやは無く
ただ暗く、静かにたゆたんでいました
砂浜と海面、空
ただその3点で構成された絵に
悲しみとも違う、切なさとも言えない不思議な感情を抱き
とても心を掴まれたのです
自分が見たかった景色はこれだ、とも思いました
どこが良かったのか説明しろと言われても
全体の雰囲気がとしか答えられないと思います
作者は誰なのか、いつ頃どこで描かれたもので
どういう背景、感情でこの絵を描いたのか
とても知りたくなりました
より深くその絵の中に入りたかったのだと思います
後でその絵画をスマホで撮影して
そのあたりをじっくり調べようと思ったのを覚えています
そんなふうに思ったのも初めての事でしたから
たたその絵を見たときはたぶん
手が塞がっていてすぐに実行に移せず
「後で」と思っていた行為はその後実現されることなく
その場を去ってしまったのです
その後ネットで「海 絵画 白黒」などで検索するも
目的の絵は出てきませんでした
どこの誰が、いつ書いたのかわからない絵
ひょっとしたら夢の中で見た絵かもしれません
僕のこの先の人生はその絵を探す旅になりそうです
ただ芸術作品が与える感動は
見る者の状況やコンディションにも左右されると思います
今まで何度聞いてもなんとも思わなかった音楽も
あるタイミングで聞き直すと
嘘のように違った捉え方だったり
今までと異なる感情を得る事があります
僕は再びその絵に巡り合えたときに
同じ感動を得られるのでしょうか
それも楽しみにしたいと思います
自分が絵画で心動かされると知れたのも
貴重な体験でした
リクの写メ日記
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人生で初めて絵に感動した話リク