vol.4『実樹のドZINE』
カレンダーを見た。
ワン、ツー、ワン、ツー。
気づけば12月12日が目の前。
ボクシングの日だ。
ボクシングの映画を君はあまり観ないかも知れないけれど『ロッキー』とか『ミリオンダラーベイビー』とか名作は沢山ある。
近年の邦画だと『あゞ荒野』とか『100円の恋」とか。『100円の恋』めっちゃいいよね。イケてる。
むしゃくしゃしてるのにどうにもならなくて心ががんじがらめの時はスクリーンの中で誰かに代わりにぶん殴ってもらうとよい。
兄弟モノの『ザ・ファイター』とか名作で大好きなんだけど、心がざわついてしまう。
ボクシングを始めた弟は才能もあったようで簡単に僕に腕力で勝り、焦った僕はとにかく必死に口で兄の威厳を守ろうとした。
沢山の知識を弟の前で披露したが、大人になって二人で焼肉を食べていた時にそのどれもが「実生活において何一つ役に立たなかった」と伝えられてしまい、まさに青天の霹靂だった。
どうやら僕は役に立たないことしか知らないらしい。
だがそれでいい。
実生活において何一つ役に立たない可笑しみを大事にしてこそ、人間たる人間らしい生き方だと信じている。
遊戯こそ宝。
遊戯で生む意地からの誇りで守る兄の威厳。
君が僕の前で甘美に感じてくれることが端正の取れた兄弟関係を守ることにつながっているので本当に感謝する。
割と自信を持ってこの世の遊戯の使い魔の如く存在してても、たまにさらに面白い話だったり、可笑しみを纏った君が悠々と越えるので、敗北感を抱き塞ぎ込みつつ、「これこれ」とニヤついて幸せを感じている。
立川談志師匠が「落語とは人間の業(ごう)の肯定だ」と言葉を残した。
尊敬してる人だ。
しかし僕は落語家じゃない。
なので「だったら業を作ったろ!新しい人間の業を更新してやる!」と力強く意気込んでいるのだ。
そんな大それた企みに君を巻き込んでしまって申し訳ないけど、きっと目一杯気持ちよくするから、付き合っておくれ。
僕の頭の中だけに存在する僕の伝記。
たとえ誰にも見せることがないとしても超面白くて中学生が鼻血を出す書物にしたいのだ。
ひとたび僕の伝記を読んだ野球部の男子中学生は鼻血を出しティッシュを詰めながら、頭がたわわでいっぱいでエラーを繰り返し、勉学に励む女子中学生は鼻血を出し、柔らかな布で鼻を抑えながら、因数分解を解いている時に"X(エックス)"が"セックス"にどうしても聴こえてしまい、何も手につかないかと思いきや、エッチなことだけ手につき放題。
未来の中坊よ。
君は僕らのせいで進学校のランクを下げることになる。
邪魔するだけでは悪いので僕らで一つ大切なことを中坊らに教えてあげよう。
くだらないの中にこそ愛があるということを。
そんなことを伝えたところ僕の空想の中の男子中学生、女子中学生がカラオケルームでフレンチキスを繰り返しながらこう伝えてきた。
「余計なお世話でちゅ」
おやおや。まあ。
負けてられないね
【東京/横浜萬天堂】実樹/みき
Twitter @miki_mantendo
実樹の写メ日記
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vol.4『実樹のドZINE』実樹